薬膳の知恵でお腹をいたわろう!下痢の時の食事と体調管理のヒント
- 道敬 大塚
- 9月24日
- 読了時間: 8分

はじめに
お腹の調子が悪い時、何を食べれば良いのか迷った経験はありませんか?現代の忙しい生活の中で、下痢などの消化器系の不調は多くの方が経験する身近な問題です。そんな時、古来から受け継がれる薬膳の知恵が、お腹をいたわる食事選びのヒントを与えてくれます。今回は、下痢の時に心がけたい薬膳の考え方と、消化にやさしい食材や調理法について詳しくご紹介します。
※重要な注意事項:この記事は一般的な食養生の情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。下痢が続く場合や発熱・血便などの症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。
中医学における下痢の考え方
下痢の原因別分類
中医学では、下痢の原因を以下のように分類しています:
外感湿熱タイプ
急性の下痢で発熱を伴うことが多い
細菌やウイルスによる感染が原因とされる
腹痛や吐き気を伴う場合がある
夏場に多く見られる傾向
脾胃虚弱タイプ
慢性的な下痢や軟便
消化機能の低下が原因とされる
疲労感や食欲不振を伴う
冷たいものや脂っこいものを摂取後に悪化
腎陽虚タイプ
明け方に起こりやすい下痢
冷えが原因とされる
手足の冷えや腰の重だるさを伴う
高齢者に多く見られる傾向
肝気鬱結タイプ
ストレスが原因とされる
腹痛や腹部の張りを伴う
感情の変化と関連して症状が変動
現代人に増加している傾向
薬膳による対処の基本方針
薬膳では、下痢の時の食事について以下の基本方針があります:
消化にやさしいものを選ぶ
胃腸への負担を最小限にする
温かく柔らかい食材を重視
油分や刺激物を避ける
少量ずつ頻回に摂取
水分と電解質の補給
脱水症状の予防
ミネラルの補給
温かい飲み物を基本とする
冷たいものは控える
下痢の時におすすめの薬膳食材
穀物類
白米
性味:甘・平
消化が良く胃腸にやさしい
エネルギー源として重要
お粥として調理するのが理想的
もち米
性味:甘・温
収斂作用があるとされる
下痢止めの民間療法として利用
消化が良いように十分に加熱
山薬(やまいも)
性味:甘・平
脾胃を補うとされる
消化酵素を含む
すりおろして食べやすくする
野菜類
大根
性味:甘辛・涼
消化を助けるとされる
大根おろしは消化酵素が豊富
加熱調理で胃腸への負担軽減
人参
性味:甘・平
β-カロテンが豊富
柔らかく煮て消化しやすく
色彩的にも食欲をそそる
白菜
性味:甘・平
水分補給にも役立つ
食物繊維が適度に含まれる
スープや煮物として活用
かぼちゃ
性味:甘・温
脾胃を温めるとされる
ビタミンAが豊富
甘みがあり食べやすい
タンパク質源
鶏肉
性味:甘・温
消化が良い動物性タンパク質
脾胃を補うとされる
皮を除いてあっさりと調理
白身魚
性味:甘・平
低脂肪で消化しやすい
良質なタンパク質源
蒸し物や煮物として調理
卵
性味:甘・平
完全栄養食品
半熟状態が消化に良い
茶碗蒸しなどで柔らかく調理
調味料・香辛料
生姜
性味:辛・温
胃腸を温めるとされる
吐き気を和らげる作用があるとされる
少量を温かい飲み物に加える
陳皮(みかんの皮)
性味:辛苦・温
理気和胃作用があるとされる
消化を助けるとされる
お茶として利用可能
甘草
性味:甘・平
調和作用があるとされる
他の食材の刺激を和らげる
少量をスープに加える
下痢の時の薬膳レシピ
基本のお粥
白米のお粥
材料:白米 1/2カップ、水 4カップ、塩 少々
作り方:米と水を鍋に入れ、弱火で40-50分炊く
ポイント:米粒が崩れるまでしっかり炊く
山薬粥
材料:白米 1/2カップ、山薬 100g、水 4カップ
作り方:山薬をすりおろし、お粥に混ぜる
ポイント:山薬は最後に加えて軽く火を通す
消化にやさしいスープ
鶏と大根のスープ
材料(2人分):
- 鶏胸肉 100g(皮を除く)
- 大根 150g
- 人参 50g
- 生姜 1片
- 昆布だし 500ml
- 塩 少々
作り方:
1. 鶏肉は一口大に切り、大根と人参は小さく切る
2. 生姜は薄切りにする
3. 昆布だしに野菜と生姜を入れて煮る
4. 野菜が柔らかくなったら鶏肉を加える
5. 鶏肉に火が通ったら塩で味を調える
かぼちゃのポタージュ
材料(2人分):
- かぼちゃ 200g
- 玉ねぎ 1/4個
- 昆布だし 300ml
- 豆乳 100ml
- 塩 少々
作り方:
1. かぼちゃと玉ねぎを小さく切る
2. 昆布だしで野菜を柔らかく煮る
3. ミキサーでなめらかにする
4. 豆乳を加えて温め、塩で調味
体を温める飲み物
生姜湯
材料(1杯分):
- 生姜 1片
- 蜂蜜 大さじ1
- 熱湯 150ml
作り方:
1. 生姜をすりおろす
2. カップに生姜と蜂蜜を入れる
3. 熱湯を注いでよく混ぜる
陳皮茶
材料(1杯分):
- 陳皮 3g
- 熱湯 150ml
作り方:
1. 陳皮を軽く洗う
2. 急須に入れて熱湯を注ぐ
3. 3-5分蒸らして飲む
症状別の食事のポイント
急性下痢の場合
初期(症状が激しい時)
固形物は避け、水分補給を重視
経口補水液やスポーツドリンクを常温で
生姜湯や陳皮茶で胃を温める
無理に食べずに胃腸を休ませる
回復期
消化の良いお粥から始める
少量ずつ様子を見ながら摂取
油分や乳製品は避ける
温かい状態で提供
慢性的な軟便の場合
日常の食事
規則正しい食事時間を心がける
よく噛んでゆっくり食べる
冷たいものや生ものは控える
温性の食材を積極的に摂取
避けたい食材
脂肪の多い食品
香辛料の強い料理
アルコール類
カフェインの多い飲み物
ストレス性の下痢の場合
食事のポイント
リラックスできる環境で食事
香りの良い食材を取り入れる
色彩豊かで見た目も楽しい料理
家族や友人との楽しい食事時間
おすすめの食材
香りの良い野菜(セロリ、三つ葉など)
柑橘類の皮(陳皮)
ジャスミン茶などの香りの良いお茶
彩りの良い野菜
調理法の工夫
消化を助ける調理法
蒸し料理
栄養素が逃げにくい
油を使わずヘルシー
食材の自然な甘みを活かせる
茶碗蒸しや蒸し魚がおすすめ
煮込み料理
食材が柔らかくなり消化しやすい
水分も同時に摂取可能
栄養が汁に溶け出す
時間をかけてじっくり調理
すりおろし・みじん切り
物理的に消化しやすくする
大根おろしや生姜おろしが効果的
食材の細胞壁が破れて栄養吸収が良くなる
高齢者や子どもにもおすすめ
避けたい調理法
揚げ物
油分が多く胃腸に負担
消化に時間がかかる
症状を悪化させる可能性
生食
消化に多くのエネルギーを要する
細菌による感染リスク
体を冷やす可能性
生活習慣でのサポート方法
食事のタイミング
規則正しい食事時間
朝食:7-8時
昼食:12-13時
夕食:18-19時
間食:14-15時頃に軽く
食事の量とペース
腹八分目を心がける
ゆっくりよく噛んで食べる
少量ずつ頻回に摂取
就寝3時間前には食事を終える
水分補給のポイント
適切な水分摂取
1日1.5-2リットルを目安
常温または温かい飲み物を選択
食事中の大量摂取は避ける
こまめな水分補給を心がける
おすすめの飲み物
白湯や温かいお茶
経口補水液(症状が激しい時)
薄い番茶やほうじ茶
生姜湯や陳皮茶
ストレス管理
リラクゼーション
深呼吸や瞑想の時間を作る
好きな音楽を聞きながら食事
入浴で体を温める
十分な睡眠時間を確保
適度な運動
散歩などの軽い運動
ストレッチやヨガ
腹式呼吸の練習
規則正しい生活リズム
注意すべき症状と受診の目安
医療機関を受診すべき症状
緊急性の高い症状
血便や黒色便
高熱(38度以上)
激しい腹痛
脱水症状(めまい、意識もうろう)
水分も取れない状態
継続的な観察が必要な症状
1週間以上続く下痢
体重減少
食欲不振が続く
日常生活に支障をきたす
薬膳の限界
薬膳は予防・養生が目的
治療ではなく体調管理が目的
急性症状には医療が必要
個人差があることを理解
基本的な医療知識も重要
予防のための日常的な食養生
胃腸を丈夫にする食習慣
日常的に心がけること
規則正しい食事時間
バランスの取れた食事内容
適度な食事量
よく噛んで食べる習慣
季節に応じた食材選び
春:山菜でデトックス
夏:水分の多い野菜で体を冷ます
秋:根菜で胃腸を整える
冬:温性の食材で体を温める
体質改善のアプローチ
脾胃虚弱タイプの改善法
温かい食べ物を中心とする
消化の良い食材を選択
規則正しい生活リズム
適度な運動習慣
ストレス性の改善法
リラックスできる食事環境
香りの良い食材の活用
十分な睡眠時間の確保
ストレス発散方法の確立
まとめ
下痢の時の食事は、薬膳の知恵を活かして胃腸をいたわることが大切です。消化にやさしい食材を選び、適切な調理法で準備することで、体調回復をサポートできるでしょう。
重要なのは、症状の程度や継続期間を正しく判断し、必要に応じて医療機関を受診することです。薬膳は日常的な体調管理や予防に役立つ知恵であり、急性症状や重篤な状態の治療を目的とするものではありません。
日頃から胃腸を大切にする食習慣を身につけ、季節や体質に応じた食材選びを心がけることで、消化器系の健康維持に役立てることができます。古来の知恵と現代の生活を上手に組み合わせて、お腹の健康を守っていきましょう。
何よりも、自分の体の声に耳を傾け、無理をせずに適切な対応を取ることが最も重要です。薬膳の知恵を参考にしながら、健やかな毎日を送ってください。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。下痢が続く場合や重篤な症状がある場合は、必ず医療機関を受診してください。薬膳の理論は伝統的な考え方に基づくものであり、現代医学とは異なるアプローチであることをご理解ください。



