薬膳の知恵で活かす「とうもろこし」|夏の不調をサポートする美味しい食べ方
- 道敬 大塚
- 9月22日
- 読了時間: 5分

夏の風物詩である甘くて美味しいとうもろこし。実は、薬膳の観点から見ても、暑い季節にぴったりの優れた食材であることをご存知でしょうか?この記事では、とうもろこしの薬膳的な性質や期待できるサポート効果、そして、より効果的に美味しく食べるためのレシピや調理のコツまでを詳しく解説します。旬のとうもろこしを、ただ美味しく食べるだけでなく、健やかに夏を乗り切るための智慧として取り入れてみましょう。
薬膳から見る「とうもろこし」の性質と特徴
中医学(薬膳)の考え方では、とうもろこしは「平性」で「甘味」に分類される食材です。これは、体を温めも冷やしもせず、穏やかに作用し、脾胃(消化器系)の働きを補い、滋養する性質を持つことを意味します。
さらに、余分な「湿気(しっけ)」や「熱」を取り除く「利水滲湿(りすいしんしつ)」「清熱(せいねつ)」の作用もあるとされています。日本の高温多湿な夏は、まさに「湿」と「熱」が体にこもりやすい季節。そんな時期に収穫期を迎えるとうもろこしは、季節の変化に順応して生きる古人の知恵が詰まった食材なのです。
とうもろこしのひげ(南蛮毛)も立派な薬材
薬膳や漢方の世界では、とうもろこしの実そのものだけでなく、「とうもろこしのひげ」(南蛮毛/なんばんもう)も古くから重宝されてきました。ひげには、実以上に強い利水作用があると考えられており、むくみや排尿トラブルのサポートに用いられてきました。捨ててしまうにはあまりにももったいない、貴重な部分です。
夏の不調をサポート|とうもろこしに期待される3つの働き
薬膳の考え方に基づくと、とうもろこしには以下のような働きが期待できます。あくまで食品としての日常的な摂取によるサポートであり、効果を保証するものではありません。
1. 余分な水分を排出し、「むくみ」を改善するサポート
夏は湿度が高く、エアコンの使用などで体の水分代謝が乱れがちです。その結果、体に余分な水分がたまり、むくみやだるさ、食欲不振の原因になることがあります。とうもろこしの「利水滲湿」の作用は、この余分な水分の排出を促し、すっきりとした体調をサポートします。
2. 胃腸の働きを整え、「食欲不振」を和らげるサポート
暑さで体力が消耗し、胃腸の機能が低下すると、夏バテの原因になります。とうもろこしの「甘味」と「平性」は、エネルギーを補いながらも消化器系に負担をかけず、脾胃の機能を穏やかに高めるサポートが期待できます。滋養がありながら、さっぱりと食べられる点も夏向きです。
3. 体にこもった「熱」を冷まし、暑さによるイライラを鎮めるサポート
暑さが厳しいと、体に熱がこもり、のどが渇いたり、イライラしたりすることがあります。とうもろこしには、そんな余分な熱を冷ます「清熱」の作用もあり、暑さによる心身のほてりを鎮め、落ち着かせるサポートが期待できます。
薬膳の知恵を活かす|とうもろこしのおすすめ調理法と食べ合わせ
せっかく食べるなら、より効果的に、そして美味しくいただきましょう。薬膳の考え方を取り入れた調理のコツをご紹介します。
1. むくみが気になる時は「ひげ茶」がおすすめ
とうもろこしのひげは、乾燥させてお茶にすると手軽に楽しめます。
作り方
とうもろこしのひげをきれいに洗い、日陰で完全に乾燥させる。
乾燥ひげ5〜10g程度をやかんに入れ、水500〜600mlを加える。
弱火で10〜15分程度、煎じる。
こして、温かいままでも冷やしてもお召し上がりください。
ほんのりと甘く、香ばしい風味が特徴です。むくみが気になる日の水分補給に最適です。
2. 胃腸を労わりたい時は「ポタージュスープ」に
とうもろこし自体が持つ甘味と滋養をまるごと摂取できる、胃に優しい調理法です。牛乳の代わりに豆乳を使うと、さらにさっぱりといただけます。仕上げにほんの少し生姜のすりおろしを加えれば、体を温める作用がプラスされ、冷房で冷えた体にもぴったりです。
3. 食欲がない時は「さっぱり和え物」に
ゆでたとうもろこしの実を、きゅうりやトマトなどの夏野菜と合わせて、酢の物やマリネに。酢の酸味には食欲を増進させる作用が、きゅうりやトマトには体の熱を冷ます作用があります。薬膳の「清熱」作用を高める、夏らしいさっぱりレシピです。
おすすめの食べ合わせ
+ 鶏肉:気力を補う鶏肉と組み合わせることで、夏バテで消耗した体力の回復サポートに。
+ 小豆・はとむぎ:どちらも利水作用を持つ食材。組み合わせることで、むくみ対策のサポート効果が高まります。
+ なつめ:脾胃の機能を高めるなつめと組み合わせ、胃腸の働きをより強力にサポート。
美味しいとうもろこしの選び方と保存方法
薬膳の効果を最大限に活かすには、素材そのものの質も重要です。
選び方:
皮の緑色が濃く、みずみずしいもの。
ひげが濃い茶色でふさふさとしているもの(ひげが黒ずんでいるのは収穫から時間が経過している証拠)。
実の先端までぎっしりと詰まっているもの。
保存方法:
鮮度が落ちやすいので、購入したらできるだけ早く調理するのがベスト。
すぐに食べない場合は、ゆでてから冷蔵または冷凍保存する。
とうもろこしに関する注意点
とうもろこしは食品です:あくまで日常の食生活の中で楽しむ食材です。特定の病気の治療を目的としたものではありません。
体質によっては適量を:極端に大量に摂取すると、まれに消化不良を起こす場合があります。適量を美味しく楽しみましょう。
アレルギーに注意:食物アレルギーをお持ちの方は、ご注意ください。
まとめ:旬のとうもろこしは、夏を健やかに過ごすための自然の恵み
とうもろこしは、その甘さと美味しさだけでなく、薬膳の観点から見ても、高温多湿な日本の夏を元気に乗り切るための心強い味方です。
「むくみ」「食欲不振」「ほてり」といった、夏に起こりがちな不調を、美味しく食べながらサポートしてくれる智慧が詰まっています。ぜひ、旬の時期に、実もひげもまるごと無駄なく、ご自身とご家族の健康づくりに活かしてみてください。食卓が、より豊かで健やかなものになるはずです。
免責事項:本記事でご紹介した内容は、中医学(薬膳)の知識に基づく一般的な情報です。効果・効能を保証するものではなく、医療行為を目的としたものではありません。体調に不安がある場合や治療中の方は、必ず医師や専門家にご相談ください。



