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薬膳カレーの効果とは?スパイスの力と東洋医学の智慧で体を内側から温め整える

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月25日
  • 読了時間: 7分
薬膳カレー 効果イメージ画像

カレーは、国民的な人気を誇るcomfort food(コンフォートフード)です。そんなカレーが、もしも「体の不調を整える薬膳料理」に早変わりするとしたら、もっと素敵だとは思いませんか?

実は、カレーに使われる数々のスパイスや野菜は、薬膳の観点から見ても非常に優れた特性を持つものばかり。組み合わせと調理法を少し意識するだけで、日常のカレーが「体を温めるカレー」「消化を助けるカレー」「疲れを癒すカレー」へと進化します。

この記事では、薬膳の考え方を取り入れた「薬膳カレー」に期待できる効果と、その理由を詳しく解説します。特別な材料は必要なく、スーパーで手軽に買える食材で作れるレシピもご紹介。美味しく食べて体も喜ぶ、そんな一石二鳥の薬膳カレーの世界をのぞいてみましょう。

薬膳カレーとは?~スパイスは天然の生薬(しょうやく)の宝庫~

薬膳カレーとは、中医学(薬膳)の理論に基づき、体質や体調に合わせて食材やスパイスを選び、組み合わせたカレーのことです。決して難しく考える必要はありません。基本は「カレーを食べた後、体が重だるくならない、むしろ軽く感じる」ようなカレーを目指すことです。

その鍵を握るのが「スパイス」です。多くのスパイスは、漢方でも使われる「生薬」と同じ植物由来です。つまり、スパイス自体にさまざまな作用があるのです。

  • turmeric(ターメリック/ウコン): 肝機能を助ける、抗炎症作用があると言われる。薬膳では「活血(かっけつ)」(血の巡りを良くする)作用がある。

  • cinnamon(シナモン): 体を温め、血流を改善する。冷え性改善の代表的なスパイス。

  • cumin(クミン): 胃腸の働きを促進し、消化を助ける。食欲増進効果も。

  • coriander(コリアンダー): 胃もたれを解消し、気の巡りを良くする。

  • ginger(ジンジャー): 体を芯から温め、冷えによる嘔吐や咳を鎮める。

  • garlic(ガーリック): 体を温め、免疫力を高める。解毒作用もある。

これらを見ると、カレーは元々、体を整えるための智慧が詰まった料理であることがわかります。薬膳カレーは、このスパイスの特性を最大限に活かし、さらに具材を工夫するだけで完成するのです。

薬膳カレーに期待できる3つの効果とその理由

効果1: 体の芯からポカポカに!「冷え性改善」効果

カレーを食べると汗をかくことからもわかるように、カレーには体を温める作用があります。薬膳カレーでは、この作用をさらに強化します。

  • 理由:

    • 温性のスパイスの集合体: 上記で紹介したように、シナモン、生姜、ガーリック、クミンなど、多くのスパイスが「温め」の性質を持っています。

    • スープ(水分)を摂取する: 汁気の多いカレーにすることで、体を冷やす原因となる「水分不足」を防ぎ、スープの温かさが内臓から体を温めます。

    • 具材の工夫: かぼちゃ、玉ねぎ、人参など、根菜類は体を温める性質があります。これらをたっぷり使うことで効果アップ。

◎冷え性改善にオススメの食材: かぼちゃ、玉ねぎ、人参、生姜(多め)、シナモン(ひとつまみ追加)、羊肉(マトン)※より強く温めたい場合

効果2: 胃もたれ知らず!「消化促進」効果

脂っこいカレーは消化に悪いイメージがありますが、スパイスの力でそれを解消できるのが薬膳カレーのすごいところです。

  • 理由:

    • 消化促進スパイスの働き: クミン、コリアンダー、生姜などには、胃腸の働きを活発にし、消化液の分泌を促す作用があります。これらはまさに「消化の助っ人」です。

    • 脂肪の消化を助ける: 特にクミンは、脂っこい料理との相性が抜群で、脂肪の消化をサポートします。

    • よく煮込む調理法: 食材をじっくりと煮込むことで、消化しやすい形に変化します。特にお肉はやわらかく煮込むことがポイントです。

◎消化促進にオススメの食材: 大根(消化酵素を含む)、キャベツ(胃の粘膜を保護)、鶏むね肉やささみ(脂身が少ない)、きのこ類(食物繊維で腸内環境を整える)

効果3: 疲れた心身をリセット!「疲労回復・気血を補う」効果

カレーに使われる肉や野菜からは、エネルギー源となる「気」と「血」を補うことができます。

  • 理由:

    • 良質なタンパク質: お肉や豆類は、気血を作る材料となります。疲れている時こそ、良質なタンパク質が必要です。

    • ビタミン豊富な野菜: 人参やかぼちゃに含まれるβ-カロテン(ビタミンA)や、ピーマンに含まれるビタミンCは、抗酸化作用があり、疲労回復を助けます。

    • スパイスの薬効: ターメリック(ウコン)は、肝機能を助け、疲労物質の代謝をサポートすると言われています。

◎疲労回復にオススメの食材: 豚肉(ビタミンB1豊富)、鶏肉、レンズ豆やひよこ豆(植物性タンパク質)、人参、かぼちゃ、ピーマン

今日から作れる!基本の「体を温める薬膳カレー」レシピ

それでは、具体的なレシピをご紹介します。市販のカレールウでも、一手間加えることで薬膳カレーに早変わりします。

材料(4人分)

  • 鶏もも肉 300g(皮を取り、一口大に切る)

  • 玉ねぎ 大2個(みじん切りと薄切りに分ける)

  • 人参 1本(いちょう切り)

  • かぼちゃ 200g(一口大に切る)

  • 生姜 1片(みじん切り)

  • にんにく 2片(みじん切り)

  • 市販のカレールウ(お好みの辛さ) 適量

  • 水 800ml

  • サラダ油 大さじ1

  • 【隠し味&薬膳ポイント】

    • はちみつ 小さじ1

    • リンゴ酢(または酢) 大さじ1

    • シナモンパウダー ひとつまみ

作り方

  1. 下準備(重要): 玉ねぎのみじん切り部分と、生姜、にんにくをみじん切りにします。これが香りとコクのベースになります。

  2. 香味野菜を炒める: 鍋にサラダ油をひき、弱火で玉ねぎのみじん切りをじっくりと炒めます。きつね色になるまで20分ほど時間をかけて炒めると、甘味とコクが増します。

  3. スパイスを香り立てる: きつね色になった玉ねぎに、みじん切りにした生姜とにんにくを加え、さらに2分ほど炒めます。良い香りが立ってきます。

  4. 肉を炒める: 鶏肉を加え、表面に火が通るまで中火で炒めます。

  5. 野菜を加えて煮込む: 薄切りの玉ねぎ、人参、かぼちゃを加え、全体に油が回るようにさっと炒めます。

  6. 水を加えて煮る: 水を注ぎ、沸騰したらアクを取り、弱火で20分ほど煮込みます。野菜が柔らかくなるまでしっかり煮ましょう。

  7. カレールウを溶かす: 一度火を止め、カレールウを割り入れて溶かします。

  8. 薬膳の隠し味を加える: 再び弱火でとろみがつくまで5分ほど煮込み、最後にはちみつ、リンゴ酢、シナモンパウダーを加えてひと混ぜし、火を止めます。

    • はちみつ: 味をまろやかにし、胃を労わる。

    • 酢: さっぱり感を出し、ミネラルの吸収を助ける。クエン酸効果で疲労回復も。

    • シナモン: 温め効果をプラス。

このレシピの薬膳的ポイント

  • 玉ねぎ、生姜、にんにく、かぼちゃ、シナモンと、温め効果の高い食材をふんだんに使用。

  • 鶏肉は比較的脂身が少なく、消化の負担が軽い。

  • じっくり炒めて煮込むことで、素材の甘味と栄養を引き出し、消化吸収を良くしている。


体調や目的に合わせてアレンジ!薬膳カレーのバリエーション

  • 【むくみが気になる方へ】「利尿作用」を高めるカレー

    • オススメ食材: 大豆(蒸し大豆や豆乳)、きのこ類(しいたけ、えのき)、セロリ

    • ポイント: 豆乳でコクを出す「豆乳カレー」にすると、体の余分な水分排出を促します。

  • 【ストレスが多く、イライラしやすい方へ】「気の巡り」を良くするカレー

    • オススメ食材: 香味野菜(しそ、三つ葉)、柑橘類(レモンの絞り汁)、ピーマン

    • ポイント: 仕上げにしそや三つ葉を散らし、食べる直前にレモンを絞ると、すっきりとした味わいで気分もリフレッシュ。


まとめ:薬膳カレーは、美味しさと健康を両立する最強の家庭料理

薬膳カレーの魅力は、何よりも「美味しくて、体に優しい」ことです。特別なことをするのではなく、ほんの少しの知識と意識で、日常の食卓が養生の場に変わります。

まずは基本のレシピから試してみて、ご自身の体調に合わせて具材を変えてみてください。今日は冷えが気になるからかぼちゃを多めに、今日は胃が重いから大根を入れてみよう、そんなふうに、カレー作りがもっと楽しくなるはずです。

美味しいカレーを食べて、心も体もポカポカ温まる。そんな薬膳カレーを、ぜひご家庭でお試しください。


※この記事でご紹介した内容は、薬膳の考え方に基づく食養生の一例です。病気の治療や予防を保証するものではありません。体調に不安がある場合は、必ず医師にご相談ください。

 
 
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