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イライラの原因は体のSOS?薬膳で整える、健やかな心と体のバランス

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月24日
  • 読了時間: 5分
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季節の変わり目や忙しい毎日、人間関係…。ふとした瞬間にわき上がる「イライラ」。この感情、実は単なる気の持ちようだけではなく、あなたの体が発しているSOSサインかもしれません。

「薬膳」というと、特別な生薬や難しそうな料理をイメージされる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、薬膳の基本はとてもシンプル。「食は命なり」 という考え方のもと、日々の食事を通じて体のバランスを整え、自然治癒力を高めていくことを目的としています。

本記事では、薬膳の知恵を借りながら、イライラと体の関係性を探り、今日の食卓から実践できるヒントをご紹介していきます。お伝えするのは「治療」ではなく、あくまで「体質改善」のためのヒントです。穏やかな気持ちで毎日を過ごすための、食の参考にしていただければ幸いです。

イライラを薬膳で考える~「肝」の機能とストレスの深い関係~

東洋医学(中医学)の考え方では、イライラといった精神的な不調は、五臓の一つである 「肝(かん)」 の機能と深く関わっていると考えられています。

ここでいう「肝」は、西洋医学の肝臓そのものではなく、気(エネルギー)や血(けつ:血液とその栄養)の流れをスムーズにコントロールする役割を担っています。いわば、体全体の「気の流れ」を司る司令塔のような存在です。

この「肝」が、過度なストレスや疲れ、不規則な生活によってダメージを受けると、気の流れが滞ってしまいます。これを 「肝気鬱結(かんきうっけつ)」 といい、これがイライラ、憂うつ感、胸や脇腹の張りといった症状として現れるのです。

逆に、ストレスが極度に強かったり、長期間続いたりすると、「肝」の気が上へ上へと昇ってしまい、興奮や怒りっぽい状態(「肝陽上亢(かんようじょうこう)」)を招くこともあります。この場合、イライラに加えて、頭痛、めまい、不眠、目の充血などの症状が伴いやすくなります。

つまり、薬膳的な視点では、イライラを単なる心の問題ではなく、「肝」の機能失調という体の内側からのサインと捉え、食事でアプローチしていくのです。

イライラ対策の薬膳的アプローチ~3つのキーワード~

では、具体的にどのような食材を選べばよいのでしょうか。イライラを鎮め、「肝」の機能をサポートするための薬膳的なアプローチは、主に3つあります。

1. 気の流れを整える「理気(りき)」の食材

気の流れの滞り(気滞)を改善し、スムーズにする働きを持つ食材です。香りの良い食材に多く含まれます。

  • :春菊、三つ葉、セロリ、パクチー、紫蘇、菊花、みかん、陳皮(ちんぴ:干したみかんの皮)、ジャスミン茶など

  • おすすめの食べ方:香りを活かすため、加熱しすぎないようにしましょう。サラダや仕上げのトッピング、香り付けのお茶として取り入れるのが効果的です。

2. 興奮を鎮める「安神(あんしん)」の食材

精神を落ち着かせ、心の安定を図る働きを持つ食材です。質の良い睡眠をサポートしてくれます。

  • :百合根、蓮の実、ナツメ、小麦、牛乳、卵、牡蠣(かき)など

  • おすすめの食べ方:百合根や蓮の実はお粥に、ナツメはデーツのようにそのままおやつにしたり、スープや茶粥に加えたりすると食べやすくなります。

3. 「肝」の機能を養う「養肝(ようかん)」の食材

「肝」そのものを労わり、その機能を高めるために必要な栄養を補給する食材です。

  • :枸杞の実(クコの実)、ブルーベリー、ブドウ、黒ごま、ほうれん草、小松菜、レバー、イカ、エビなど

  • おすすめの食べ方:クコの実はスープやヨーグルトに、黒ごまはすりごまにして和え物に。色の濃い野菜は、油と一緒に摂取することで吸収率が上がります。

今日から始められる!薬膳を取り入れたイライラ対策レシピ

特別な材料は一切必要ありません。スーパーで手軽に買える食材でできる、簡単なレシピをご紹介します。

【理気と安神の】春菊とナツメのやさしいお粥

<材料(2人分)>

  • ご飯…茶碗1杯分

  • 水…400ml

  • 春菊…1/2束

  • ナツメ(乾燥)…5粒

  • 鶏ひき肉…50g

  • 生姜…ひとかけ

  • 塩…小さじ1/2程度

  • 醤油…少々

<作り方>

  1. ナツメは種を取り、細かく刻む。春菊は茹でて冷水に取り、水気を絞って粗みじん切りにする。生姜はみじん切りにする。

  2. 鍋にご飯、水、刻んだナツメ、鶏ひき肉、生姜を入れて中火にかける。

  3. 沸騰したら弱火にし、時々混ぜながら10分ほど煮て、お粥の状態にする。

  4. 塩、醤油で味を調え、最後に刻んだ春菊を加えてさっと混ぜ、火を止める。

  5. 蓋をして少し蒸らせば完成。

<薬膳的ポイント>

  • 春菊:気の流れを整える「理気」作用があります。

  • ナツメ:心を落ち着かせる「安神」作用があり、胃腸の働きも助けます。

  • 生姜:体を温め、気血の巡りを良くします。お粥そのものが胃腸に優しく、消化吸収を助け、気血を生み出す源となります。疲れている時や、食欲がない時のイライラにもおすすめです。

避けたい食習慣~イライラを助長するもの~

良い食材を取ることも大切ですが、同時に見直したいのが食習慣です。以下のような習慣は、気の流れを乱したり、「肝」に負担をかけたりする要因となります。

  • 早食い・ながら食い:消化吸収の効率が落ち、気血を消耗します。

  • 刺激の強いものの過剰摂取:辛いもの、脂っこいもの、アルコールの摂りすぎは、「肝」に熱をこもらせる原因になります。

  • 不規則な食事時間:体内リズムが乱れ、気血の流れが不安定になります。

食事とともに見直したい生活習慣

薬膳は食事だけではなく、生活全体を整えることが大切です。以下の点も意識してみましょう。

  • 十分な睡眠:夜は血が「肝」に戻り、修復される時間です。できるだけ0時前には就寝することを心がけましょう。

  • 適度な運動:ウォーキングやストレッチなど、軽い運動は気血の流れを促進します。

  • 休息の時間を作る:何もせずにぼーっとする時間も、心と体をリセットするために重要です。

まとめ:焦らず、少しずつ。食で整える心のバランス

いかがでしたでしょうか。イライラという感情と、私たちの体(特に「肝」)は密接につながっています。今回ご紹介した食材やレシピは、あくまでも体質を整え、イライラしにくい心身を作るためのサポートです。即効性を求めるのではなく、日々の食事の選択肢の一つとして、無理なく取り入れてみてください。

「今日はイライラしやすいかも」と感じた日は、香りの良い野菜を意識して選んだり、温かいお粥で胃腸を休めたりするだけでも、体へのアプローチが始まっています。ご自身の体の声に耳を傾けながら、薬膳の知恵をぜひ日常に活かしてみてください。

穏やかな毎日を、食から育んでいきましょう。

 
 
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