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夏の疲れを薬膳でリセット!「気」と「水分」を補い、秋へつなぐ体づくり

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月24日
  • 読了時間: 6分

夏の疲れを薬膳で改善するイメージ画像

暑さが和らぎ始める頃、ふと襲ってくるだるさや食欲不振。いわゆる「夏の疲れ」や「秋バテ」と呼ばれる状態です。「なんとなく体が重い」「胃もたれがする」「やる気が出ない」——そんな不調を感じていませんか?

この夏の疲れは、単に暑さで体力を消耗しただけではなく、薬膳の視点で見ると、体にとって大切な 「気(き:エネルギー)」「水分」 が大きく消耗した結果として現れています。

本記事では、薬膳の考え方に基づいて夏の疲れのメカニズムを理解し、食事を通じて元気な体を取り戻すヒントをご紹介します。ここでお伝えするのは病気を治すものではなく、あくまで不調を感じやすい季節の変わり目を、健やかに乗り切るための「体質改善」と「養生」のアイデアです。夏に疲れた体を内側からいたわり、すっきりとした気分で秋を迎えるための参考にしていただければ幸いです。

薬膳で考える「夏の疲れ」の正体~消耗した「気」と「水分」を補給する~

なぜ、夏が終わった後に疲れがどっと出てくるのでしょうか。薬膳では、その原因を主に3つに分けて考えます。

1. 「気」の消耗~エネルギー切れの状態~

夏の暑さは、体にとって大きなストレスです。体温を一定に保とうと体温調節機能がフル稼働するため、多くのエネルギーを消費します。このときに消耗するのが、生命活動の原動力である「気」です。

「気」が不足した状態を 「気虚(ききょ)」 といい、以下のような症状として現れます。

  • 疲労感、だるさ

  • 食欲不振

  • やる気が出ない

  • 風邪をひきやすい

2. 「水分」の消耗~体の潤い不足~

汗をかくことは、暑さから体を守るための重要な機能ですが、同時に体の潤い(津液:しんえき)も奪っていきます。この潤いは、血液や体液の原料となり、臓器をうるおして正常に働かせるために不可欠です。

水分が不足すると、次のような不調が現れやすくなります。

  • 口の渇き

  • 肌の乾燥

  • 尿量の減少

  • 便秘気味

3. 「脾胃(ひい:消化器系)」の機能低下~夏の冷えが原因~

もう一つの大きな原因が、冷たい飲み物や食べ物の摂りすぎによる消化器系(脾胃)の機能低下です。夏場はどうしても冷たいものが欲しくなりますが、これにより脾胃を冷やし、消化吸収の力を弱めてしまいます。すると、食べ物から「気」や「血」を生み出す力が落ち、疲労回復が遅れてしまうのです。

つまり、夏の疲れをリセットするためには、この3つ——「気を補う」「水分を補う」「脾胃の機能を回復させる」——へのアプローチが鍵となるのです。

夏の疲れに効く!薬膳の食材カテゴリー

消耗したものを補い、弱った機能を回復させるために、以下のような食材を意識して取り入れてみましょう。

1. エネルギー「気」を補う食材

「気虚」による疲労感や食欲不振を改善するために、気を補い、脾胃の働きを高める食材を選びましょう。

  • 代表食材: 米、うるち米、山芋、かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも、牛肉、鶏肉、鯵、イワシ、豆類、蜂蜜、きのこ類

  • ポイント: 基本的なエネルギー源となる穀類(特にお粥)や、いも類がおすすめです。脾胃を温める性質を持つものが多いです。

2. 体の「潤い」を補う食材

水分不足による乾燥や、体にこもった余分な熱を冷ますために、体を潤す作用のある食材を選びます。

  • 代表食材: 豆腐、豆乳、牛乳、白きくらげ、梨、ぶどう、柿、トマト、きゅうり、冬瓜、牡蠣、しじみ、卵

  • ポイント: 白くてみずみずしい食材や、貝類に多く見られます。生のままより、軽く加熱したり、スープやお粥にして食べると脾胃に優しいです。

3. 「脾胃」の機能を高める食材

冷えで弱った消化機能を回復させ、栄養の吸収力を高める食材です。

  • 代表食材: 生姜、しそ、山椒、陳皮(ちんぴ)、かぼちゃ、キャベツ、大根、りんご、鮭

  • ポイント: 香味野菜や、消化を助ける酵素を含む食材が該当します。香味野菜は薬味として、野菜は煮込むなどして胃腸の負担を減らす調理法が良いでしょう。

夏の疲れリセット!薬膳的おすすめレシピ

弱った胃腸に負担をかけず、効率よく栄養を補給できる、簡単レシピをご紹介します。

【気と潤いを同時に補う】山薬(山芋)としじみのとろとろ粥

<材料(2人分)>

  • ご飯…茶碗1杯分

  • しじみ(砂抜き済み)…100g

  • 長いも(またはつくねいも)…100g

  • 生姜…1片

  • 水…400ml

  • 酒…大さじ1

  • 塩…少々

  • 刻みネギ…お好みで

<作り方>

  1. しじみはよく洗い、長いもは皮を剥いてすりおろす。生姜は千切りにする。

  2. 鍋に水、酒、しじみ、生姜を入れて火にかけ、しじみの口が開くまで煮る。

  3. しじみを取り出し、身をはずす(お好みで)。煮汁はこさずにそのまま使う。

  4. 鍋にご飯を加え、弱火で10分ほど煮てお粥状にする。

  5. すりおろした長いもを加え、よく混ぜながらさらに2~3分加熱する。

  6. 塩で味を調え、器に盛ってしじみの身と刻みネギをトッピングする。

<薬膳的ポイント>

  • しじみ: 体の潤いを補い、余分な熱を取る。弱った肝臓をいたわる働きも期待できる。

  • 山薬(山芋): 気を補い、脾胃の機能を強くする代表食材。消化吸収を促進する。

  • 生姜: 脾胃を温め、消化を助ける。お粥は消化吸収が最も良く、胃腸に優しい料理です。しじみのうま味と山芋のとろみで、食欲がない時でも食べやすくなっています。

【脾胃を温め、消化を助ける】大根と生姜の簡単サラダ

<材料(2人分)>

  • 大根…5cm

  • 生姜…1片

  • 塩…小さじ1/3

  • ごま油…小さじ1

  • 醤油…少々

  • 白ごま…少々

<作り方>

  1. 大根は皮を剥き、千切りまたは薄いいちょう切りにする。生姜はみじん切りにする。

  2. ボウルに大根と塩を入れ、しんなりするまで軽くもむ。

  3. 水気を軽く絞り、生姜、ごま油、醤油を加えて和える。

  4. 器に盛り、白ごまをふりかける。

<薬膳的ポイント>

  • 大根: 消化を促進し、気の流れを良くする。「積もったものを掃除する」イメージです。

  • 生姜: 体を内側から温め、冷えによる脾胃の不調を改善する。さっぱりとしていながら、生姜の温かさで胃腸を労わる副菜です。脂っこいものと一緒に食べるのもおすすめです。

食事とともに見直したい生活習慣

  • 温かいものを摂る: 朝一番に白湯を飲むなど、内臓を冷やさない習慣を心がけましょう。

  • 腹八分目にする: 弱った胃腸をいたわるため、消化しやすい量を心がけます。

  • 十分な睡眠をとる: 睡眠は「気」と「血」を養い、体を修復する最も重要な時間です。

  • 軽い運動をする: 散歩などで軽く体を動かすと、気血の流れが良くなり、食欲増進につながります。

まとめ:焦らず、ゆっくりと。食事で整える夏の疲れ

夏の間に消耗した「気」と「水分」は、すぐには戻りません。無理に栄養を詰め込むのではなく、胃腸に優しい食事から少しずつ体をいたわり、整えていくことが大切です。

今回ご紹介した食材やレシピは、薬のように即効性を求めるものではなく、体が本来持っている回復力を食事でサポートするためのものです。「今日はお粥にしよう」「生姜をちょっと多めに入れてみよう」という小さな心がけの積み重ねが、健やかな体へと導いてくれます。

夏の疲れを感じ始めたこの時期こそ、ご自身の体の声に耳を傾け、薬膳の知恵を取り入れた穏やかな養生を始めてみてはいかがでしょうか。

 
 
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