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胃腸に優しい食べ物を薬膳の知恵で選ぼう!疲れた胃腸を根本からケアする食養生のススメ

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月25日
  • 読了時間: 7分

胃腸に優しい食べ物 薬膳イメージ画像

「最近、胃がもたれる」「食後に腹部が張る感じがする」「疲れると胃腸の調子がすぐれない」…そんなお悩みはありませんか?

つい市販の胃薬に頼りがちですが、それで一時的に楽になっても、根本的な体質改善には至らないことが多いものです。そこで見直したいのが、日々の食事。数千年の歴史を持つ中医学(東洋医学)の智慧「薬膳」の考え方を取り入れることで、胃腸に負担をかけず、むしろ胃腸の機能を高める食べ方をすることができます。

この記事では、「胃腸に優しい」を薬膳の観点から深掘りし、なぜその食材が良いのか、どう調理すればより効果的なのかまでを詳しくご紹介します。特別な食材は必要なく、身近な野菜やお米を使って今日から始められる養生法です。胃腸と上手に付き合い、健やかな毎日を送るための参考にしてください。

薬膳で考える「胃腸」の役割~「脾」と「胃」は気血の源~

薬膳は、中医学の理論に基づいた食事法です。単に栄養素を見るのではなく、食べ物が体にどのような「作用」をもたらすか(体を温めるか冷やすか、どの臓器に働くかなど)を重視します。

胃腸の不調を考える上で、薬膳で最も重要視されるのが「脾(ひ)」の機能です。脾は現代医学の「脾臓」とは少し異なり、消化吸収全般をつかさどる機能全体を指します。胃が食べ物を消化するのに対し、脾はその栄養分(水穀の微:すいこくのき)を全身にエネルギー(気)や血(けつ)に変えて送り届ける役割を担っています。

つまり、脾と胃は「気血」という生命活動のエネルギーを生み出す工場なのです。この工場が元気であれば、体全体に十分なエネルギーが行き渡り、免疫力も高まり、肌ツヤも良くなります。逆に、この工場が弱ると(「脾虚:ひきょ」という状態)、エネルギー不足になり、疲れやすく、だるく、胃腸の不調も起こりやすくなります。

胃腸に優しい食事とは、この「脾」と「胃」を労わり、機能を高める食事のことなのです。

胃腸を強くする薬膳の3大原則

具体的な食材の前に、まずは基本となる考え方を押さえましょう。

  1. 消化の良いものを選ぶ(胃に負担をかけない)当然ですが、脂っこいものや生もの、硬いものは消化に多くのエネルギーを消費し、脾や胃に負担をかけます。疲れている時は特に、消化に良い「優しい」食材を選びましょう。

  2. 温かい状態で食べる(「脾」は温めると喜ぶ)脾は「温」を好み、「冷え」を嫌う性質があります。冷たい飲み物や生野菜の摂りすぎは脾の機能を低下させます。できるだけ温かいスープや煮物、温野菜など、体の中から温める食事を心がけることが基本です。

  3. よく噛んで食べる(消化の第一歩は口の中)噛むことで食べ物が細かくなり、消化酵素の働きを助けます。さらに、噛む行為自体が脾の働きを活性化させるとされています。一口30回を目標に、ゆっくりと時間をかけて食事をしましょう。

薬膳で推奨!胃腸に優しい食材リスト

ここからは、脾や胃の機能を高め、消化を助ける具体的な食材をご紹介します。

【主食】

  • お米(白米): 最も基本的で優れた胃腸養生食です。特におかゆ(お粥) は、消化吸収が非常に良く、胃腸が弱っている時や病後の回復期の第一選択肢。水分が豊富で体を潤し、胃の粘膜を保護する効果も期待できます。雑炊やリゾットも良いでしょう。

  • うどん: 小麦から作られるうどんも消化の良い食材です。ただし、冷たいよりは温かいうどんを選び、よく噛んで食べましょう。


【野菜】

  • 大根: 消化を促進する酵素(ジアスターゼ)が豊富で、食べ過ぎや胃もたれに効果的です。ただし、この酵素は加熱に弱いので、大根おろしなど生で食べるのがおすすめ。加熱すると体を温める作用が強まります。

  • かぶ: 大根と同様、消化を助けるアミラーゼを含みます。葉にも栄養が豊富なので、葉も一緒にスープなどに使いましょう。

  • キャベツ: 「胃腸のビタミンU」とも呼ばれるキャベジン(ビタミンU)が、胃の粘膜の修復を助けてくれます。加熱するとかさが減りたくさん食べられるので、温野菜やスープがおすすめ。

  • 山芋・長いも: 滋養強壮の代表格。消化吸収を高め、脾の機能を補います。とろろにすると、とろみが胃の粘膜を保護してくれます。すりおろしてご飯にかけたり、スープに入れたりしましょう。

  • かぼちゃ: 甘味があり、体を温める作用のある野菜です。ビタミン類も豊富で、胃腸の調子を整え、元気をつけたい時にぴったり。煮物やポタージュスープに。


【タンパク質】

  • 白身魚(たら、かれいなど): 脂質が少なく、淡白で消化の良い良質なタンパク質源です。煮る、蒸すなどの調理法が胃に優しいです。

  • 鶏ささみ: 低脂肪で高タンパク。ほぐしてスープに入れたり、ひき肉にしてつくねにすると食べやすくなります。

  • 豆腐・納豆: 植物性タンパク質の代表。豆腐は冷奴より湯豆腐温奴に。納豆は発酵食品なので、腸内環境を整える効果も期待できます。


【その他、薬味・香味野菜】

  • 生姜: 薬膳の要。体を芯から温め、冷えによる胃腸の不調を改善します。殺菌作用もあり、魚や肉の臭み消しにも。すりおろしてスープや紅茶に加えるのが手軽です。

  • ねぎ: 体を温め、発汗を促します。薬味として少し添えるだけで、料理の消化を助けてくれます。


胃腸が弱っている時に避けたい食材

養生と同じくらい、負担をかけないことも重要です。

  • 脂っこいもの: 天ぷら、揚げ物、脂身の多い肉などは消化に時間がかかり、胃に大きな負担をかけます。

  • 生もの: サラダ、刺身、冷奴など。体を冷やし、消化にエネルギーを使います。加熱調理を心がけましょう。

  • 刺激性の強いもの: 香辛料、コーヒー、アルコール、炭酸飲料は、胃の粘膜を刺激します。

  • 甘いお菓子やジュース: 白砂糖たっぷりのお菓子は、脾に湿気(余分な水分や老廃物)を溜め、機能を低下させるとされています。

  • 硬いもの: 堅果類、スルメなどは物理的に消化が大変です。

今日から試せる!簡単「胃腸に優しい」薬膳レシピ2選

1. 基本の養生粥(ようじょうがゆ)

胃腸が最も休まる定番メニューです。具材を変えてアレンジできます。

  • 材料(1人分): ご飯 茶碗1杯、水 400~500ml、鶏ささみ 1本、生姜 1片、長ねぎ 適量、塩 少々

  • 作り方:

    1. 鶏ささみは一口大に切り、生姜は薄切りにする。長ねぎは小口切り。

    2. 鍋にご飯と水、ささみ、生姜を入れて中火にかける。

    3. 煮立ったら弱火にし、ふたを少しずらして20~30分ほどコトコト煮る。ご飯が柔らかくなり、おかゆの状態になるまで煮込む。

    4. ささみに火が通ったら、塩で味を調え、器に盛ってねぎを散らす。

  • 薬膳的ポイント: お米で胃を保護し、ささみで優しくタンパク質を補給。生姜で体を温め、消化を促進します。

2. 大根とキャベツのとろみスープ

野菜の甘味が感じられる、優しい味わいのスープです。

  • 材料(2人分): 大根 5cm、キャベツ 2~3枚、鶏ひき肉 100g、生姜 1片、片栗粉 大さじ1、水 600ml、顆粒コンソメ(または鶏ガラスープの素) 小さじ1、塩コショウ 少々

  • 作り方:

    1. 大根は皮をむき、いちょう切り。キャベツはざく切り、生姜はみじん切りにする。

    2. 鍋に水、顆粒コンソメ、大根を入れて火にかけ、柔らかくなるまで煮る。

    3. 大根が柔らかくなったら、鶏ひき肉と生姜を加え、ほぐしながら火を通す。

    4. キャベツを加え、しんなりするまで煮る。

    5. 塩コショウで味を調え、水溶き片栗粉でとろみをつける。

  • 薬膳的ポイント: 大根の消化促進効果、キャベツの胃粘膜保護効果に加え、とろみがつくことで胃に優しく、体も温まります。

生活習慣も見直そう~食事以外でできる胃腸ケア~

食事だけでなく、生活全体で胃腸を労わることが大切です。

  • 規則正しい食事時間: 食事の時間がバラバラだと、胃腸が休む暇がありません。できるだけ決まった時間に3食食べるリズムを作りましょう。

  • ストレスを溜めない: ストレスは胃腸の大敵。中医学では「肝(かん)」の不調が胃に影響を与える(「肝胃不和」)と考えられています。適度な運動や趣味で気分を発散させましょう。

  • 十分な睡眠: 睡眠中は胃腸も休息します。質の良い睡眠を十分にとることで、胃腸の機能が回復します。

まとめ:胃腸に優しい食事は、健やかな体づくりの第一歩

いかがでしたか?薬膳の考え方を知ると、「何を食べるか」だけでなく、「どう食べるか」の重要性がわかります。胃腸の調子が良くなれば、栄養の吸収が高まり、体全体のエネルギーが満ちて、心も体も軽やかになる好循環が生まれます。

まずは、今日の夕食に「温かいスープ」を一品加えることから始めてみてはいかがでしょうか。無理せず、ご自身の体調と相談しながら、できる範囲で薬膳の知恵を取り入れて、胃腸と仲良く付き合っていきましょう。

※この記事は薬膳の知恵に基づく食養生の情報を提供するものであり、特定の疾病の治療や治癒を保証するものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。

 
 
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