胃腸に良い薬膳で健やかな毎日!消化をサポートする食材と調理法
- 道敬 大塚
- 9月25日
- 読了時間: 9分

はじめに
現代社会では、不規則な食生活やストレス、運動不足などにより、胃腸の調子を崩しやすい環境にあります。そんな中、古来から受け継がれる薬膳の知恵が、胃腸をいたわる食事法として注目を集めています。薬膳は「医食同源」の考えに基づき、食材の持つ自然の力を活用して体のバランスを整えることを目指す食養生法です。今回は、胃腸に良いとされる薬膳の基本的な考え方から、日常で実践できる具体的な方法まで詳しくご紹介します。
薬膳における胃腸の考え方
中医学の「脾胃」概念
中医学では、消化器系を「脾胃」として捉えています。これは西洋医学の胃腸とは異なる概念で、より包括的な消化・吸収・代謝システムを表しています。
脾の主な機能
食物の消化・吸収を司る
栄養素を全身に運搬する
水分代謝を調節する
筋肉や四肢に栄養を供給する
血液を脈管内に保持する
胃の主な機能
食物の受納と腐熟(消化)
胃気の下降により食物を小腸へ送る
津液の生成をサポートする
脾と協調して消化機能を維持する
脾胃の不調が現れやすい症状
中医学では、脾胃の働きが弱くなると以下のような症状が現れやすいとされています:
消化器系の症状
食欲不振や胃もたれ
消化不良や腹部膨満感
軟便や下痢
口の中が粘つく感覚
吐き気や嘔吐
全身への影響
疲労感や倦怠感
四肢の重だるさ
集中力の低下
浮腫みやすさ
顔色の悪さ
胃腸に良いとされる薬膳食材
穀物類
白米
性味:甘・平
帰経:脾・胃経
脾胃を補い、エネルギーを供給するとされる
消化しやすく胃腸への負担が少ない
もち米(糯米)
性味:甘・温
帰経:脾・胃・肺経
脾胃を温め、下痢を改善するとされる
お粥や餅として調理すると消化が良い
はと麦(薏苡仁)
性味:甘淡・涼
帰経:脾・胃・肺経
湿を除き、脾の働きを助けるとされる
水分代謝をサポートするとされる
山薬(やまいも)
性味:甘・平
帰経:脾・肺・腎経
脾胃を補い、消化酵素を含む
滋養強壮作用があるとされる
野菜類
大根
性味:甘辛・涼
帰経:肺・胃経
消化を促進し、気の流れを良くするとされる
大根おろしは消化酵素が豊富
キャベツ
性味:甘・平
帰経:脾・胃経
胃を保護し、潰瘍の回復をサポートするとされる
ビタミンUが豊富に含まれる
かぼちゃ
性味:甘・温
帰経:脾・胃経
脾胃を温め、気を補うとされる
β-カロテンが豊富で栄養価が高い
人参
性味:甘・平
帰経:脾・肺経
脾の働きを助け、血を養うとされる
食物繊維とビタミンが豊富
白菜
性味:甘・平
帰経:胃・膀胱経
胃の熱を冷まし、津液を生成するとされる
水分補給にも役立つ
豆類・きのこ類
豆腐
性味:甘・涼
帰経:脾・胃・大腸経
消化しやすい植物性タンパク質
胃腸に負担をかけにくい
小豆
性味:甘酸・平
帰経:心・小腸経
利水消腫作用があるとされる
食物繊維が豊富
しいたけ
性味:甘・平
帰経:胃経
胃の働きを助け、免疫力をサポートするとされる
うま味成分が食欲を促進
香辛料・調味料
生姜
性味:辛・温
帰経:脾・胃・肺経
胃を温め、吐き気を抑えるとされる
消化を促進する作用があるとされる
陳皮(みかんの皮)
性味:辛苦・温
帰経:脾・肺経
理気和胃作用があるとされる
食欲不振や消化不良に用いられる
甘草
性味:甘・平
帰経:十二経
調和作用があり、他の食材の刺激を和らげる
胃粘膜を保護するとされる
季節別胃腸ケア薬膳
春の胃腸ケア薬膳
春は肝の季節とされ、ストレスや環境の変化により胃腸に影響が出やすい時期です。
春におすすめの食材
春キャベツ:新鮮でやわらかく消化に良い
たけのこ:デトックス作用があるとされる
菜の花:苦味で肝の働きをサポート
いちご:ビタミンCが豊富で酸味が食欲を促進
春の薬膳レシピ:春野菜と豆腐のお吸い物
材料(2人分):
- 絹ごし豆腐 150g
- 春キャベツ 100g
- わかめ 大さじ1
- だし汁 400ml
- 薄口醤油 大さじ1
- 塩 少々
作り方:
1. 豆腐は一口大に切り、キャベツは細切りにする
2. だし汁を火にかけ、キャベツを加えて煮る
3. キャベツがしんなりしたら豆腐とわかめを加える
4. 調味料で味を整えて完成夏の胃腸ケア薬膳
夏は心の季節とされ、暑さや冷房により胃腸が弱りやすい時期です。
夏におすすめの食材
きゅうり:体を冷まし、水分補給に役立つ
トマト:清熱生津作用があるとされる
とうもろこし:利水作用があるとされる
緑豆:清熱解毒作用があるとされる
夏の薬膳レシピ:冬瓜と鶏肉のスープ
材料(2人分):
- 冬瓜 200g
- 鶏胸肉 100g
- 生姜 1片
- 鶏がらスープ 400ml
- 塩 少々
- 胡椒 少々
作り方:
1. 冬瓜は皮を剥き一口大に切る
2. 鶏肉は細切りにし、生姜は薄切りにする
3. スープを火にかけ、生姜と鶏肉を加える
4. 鶏肉に火が通ったら冬瓜を加えて煮る
5. 調味料で味を整えて完成秋の胃腸ケア薬膳
秋は肺の季節とされ、乾燥により胃腸の潤いが不足しやすい時期です。
秋におすすめの食材
梨:潤燥作用があるとされる
白きくらげ:肺を潤すとされる
百合根:心を安定させるとされる
蓮根:止血作用があるとされる
秋の薬膳レシピ:山薬と白きくらげのお粥
材料(2人分):
- 白米 1/2カップ
- 山薬 100g
- 白きくらげ 10g
- 水 3カップ
- 蜂蜜 大さじ1
作り方:
1. 白きくらげは水で戻しておく
2. 山薬は皮を剥き、すりおろす
3. 米と水を鍋に入れ、弱火で炊く
4. 米が柔らかくなったら白きくらげを加える
5. 最後に山薬を加え、蜂蜜で甘みを調える冬の胃腸ケア薬膳
冬は腎の季節とされ、寒さにより胃腸の働きが低下しやすい時期です。
冬におすすめの食材
羊肉:体を温める作用が強い
生姜:温中散寒作用があるとされる
ねぎ:発汗解表作用があるとされる
なつめ:気血を補うとされる
冬の薬膳レシピ:羊肉と大根の煮込み
材料(2人分):
- 羊肉 200g
- 大根 200g
- 生姜 1片
- ねぎ 1本
- 醤油 大さじ2
- 酒 大さじ1
- 砂糖 小さじ1
作り方:
1. 羊肉は一口大に切り、大根は乱切りにする
2. 生姜は薄切り、ねぎは斜め切りにする
3. 鍋に油を熱し、羊肉を炒める
4. 野菜を加えて炒め、調味料と水を加える
5. 弱火で30分煮込んで完成体質別胃腸ケアのアプローチ
脾胃虚弱タイプ
消化機能が弱く、疲れやすい方におすすめのアプローチ:
特徴
食欲不振になりがち
食後に眠くなりやすい
軟便や下痢をしやすい
手足が冷えやすい
おすすめ食材
温性で消化の良いもの
山薬、もち米、鶏肉
生姜、陳皮などの香辛料
少量ずつ頻回に摂取
脾胃湿熱タイプ
体内に湿と熱がこもりやすい方におすすめのアプローチ:
特徴
口が苦く感じる
食欲はあるが胃もたれしやすい
便秘がちで尿が濃い
体が重く感じる
おすすめ食材
清熱利湿作用のあるもの
はと麦、緑豆、冬瓜
きゅうり、トマトなどの夏野菜
油っこいものや甘いものは控えめに
胃陰不足タイプ
胃の潤いが不足している方におすすめのアプローチ:
特徴
のどが渇きやすい
空腹感はあるが食べられない
便秘になりやすい
夜中に目が覚めやすい
おすすめ食材
滋陰潤燥作用のあるもの
白きくらが、百合根、梨
蜂蜜、牛乳、卵
辛いものや熱いものは控えめに
日常生活での胃腸ケアのポイント
食事の基本ルール
規則正しい食事時間
朝食:7-8時
昼食:12-13時
夕食:18-19時
間食は控えめに
食事の量とペース
腹八分目を心がける
よく噛んでゆっくり食べる
熱すぎず冷たすぎない温度で
食事中の水分摂取は控えめに
調理法の工夫
胃腸にやさしい調理法
蒸し物や煮物を中心に
油を使いすぎない調理
食材を小さく切って消化しやすく
香辛料は適度に使用
避けたい調理法
揚げ物や炒め物の過度な摂取
生もの(刺身など)の多食
極端に熱いまたは冷たい料理
強い香辛料の多用
生活習慣でのサポート
適度な運動
食後30分後の軽い散歩
腹式呼吸で胃腸の動きを促進
ストレッチやヨガで血流改善
激しい運動は食後2時間以降に
ストレス管理
十分な睡眠時間の確保
リラックスできる食事環境
深呼吸や瞑想の時間を作る
趣味や娯楽でリフレッシュ
胃腸に良い薬膳茶
消化促進茶
陳皮茶
陳皮 3g + 熱湯 150ml
食後に飲用して消化をサポート
香りが良くリラックス効果も期待
生姜蜂蜜茶
生姜スライス 3枚 + 蜂蜜 大さじ1 + 熱湯 150ml
胃を温め、吐き気を和らげるとされる
朝一番に飲むのがおすすめ
胃腸調整茶
はと麦茶
はと麦 大さじ2 + 水 500ml
煮出して常温で飲用
利水作用があるとされる
山査子茶
山査子 5g + 熱湯 150ml
食べ過ぎた時の消化をサポート
酸味があり食欲を促進
注意すべきポイント
薬膳実践時の注意
個人差への配慮
体質や体調により適する食材が異なる
初回は少量から始めて様子を見る
アレルギーや持病がある場合は医師に相談
妊娠・授乳期は専門家に相談
バランスの重要性
薬膳食材だけでなく栄養バランスも重視
極端な食事制限は避ける
楽しく続けられる範囲で実践
経済的な負担も考慮して選択
医療機関受診の目安
受診を検討すべき症状
症状が2週間以上続く場合
血便や黒色便が出る場合
激しい腹痛や発熱を伴う場合
体重減少が著しい場合
まとめ
胃腸に良い薬膳は、古来から受け継がれる食の知恵を現代に活かす素晴らしい方法です。中医学の理論に基づいた食材選びと調理法により、胃腸をいたわりながら健康的な食生活を送ることができるでしょう。
重要なのは、自分の体質や季節、体調に合わせて食材を選択し、バランスの取れた食事を心がけることです。また、食事だけでなく、規則正しい生活習慣やストレス管理も胃腸の健康維持には欠かせません。
薬膳は即効性を求めるものではなく、継続することで徐々に体質改善を図る食養生法です。無理をせず、楽しみながら日常生活に取り入れることで、胃腸の健康をサポートし、より充実した毎日を送ることができるでしょう。
ただし、薬膳は医療行為ではありません。胃腸の症状が続く場合や重篤な場合は、必ず医療機関を受診し、適切な治療を受けることが最も重要です。薬膳の知恵を参考にしながら、健やかな胃腸と共に豊かな人生を歩んでください。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。胃腸の不調が続く場合は、医療専門家にご相談ください。薬膳の理論は伝統的な考え方に基づくものであり、現代医学とは異なるアプローチであることをご理解ください。



