薬膳でお腹をいたわろう!お腹を壊した時の食養生と回復サポート
- 道敬 大塚
- 9月25日
- 読了時間: 9分

はじめに
お腹を壊すという経験は、誰にでもある身近な体調不良の一つです。食べ過ぎ、冷たいものの摂りすぎ、ストレス、季節の変わり目など、様々な原因でお腹の調子が悪くなることがあります。そんな時、古来から受け継がれる薬膳の知恵が、お腹をいたわり回復をサポートする食事選びのヒントを与えてくれます。薬膳は「医食同源」の考えに基づいた食養生法であり、体の状態に応じて適切な食材を選ぶことで、自然な回復力をサポートすることを目指します。
※重要な注意事項:この記事は一般的な食養生の情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや治療法ではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、必ず医療機関を受診してください。特に血便、高熱、激しい腹痛、脱水症状などがある場合は緊急に医師の診察を受けることが重要です。
お腹を壊す原因と中医学的理解
一般的な原因
お腹を壊す原因は多岐にわたりますが、主なものとして以下が挙げられます:
食事関連要因
暴飲暴食による胃腸への負担
冷たいものや氷の摂りすぎ
脂っこい食べ物の過剰摂取
不衛生な食べ物による感染
アルコールの飲み過ぎ
環境・生活要因
季節の変わり目による体調変化
クーラーによる体の冷え
不規則な生活リズム
睡眠不足による免疫力低下
旅行先での環境変化
精神的要因
ストレスによる自律神経の乱れ
緊張や不安による胃腸機能の低下
過度の心配や悩み
感情の起伏による影響
中医学的な分類
中医学では、お腹を壊す原因を以下のように分類します:
外感湿熱タイプ
細菌やウイルスによる急性の症状
発熱や悪寒を伴うことが多い
夏場に多く見られる
水様下痢や嘔吐を伴う場合がある
飲食積滞タイプ
食べ過ぎや飲み過ぎが原因
腹部膨満感や胃もたれを伴う
ゲップや食欲不振が見られる
消化不良による症状
脾胃虚寒タイプ
冷たいものの摂りすぎが原因
体質的に胃腸が弱い人に多い
腹痛や下痢を伴う
手足の冷えも見られる
肝気犯胃タイプ
ストレスや感情の変化が原因
腹痛の強さが変動する
精神状態と症状が連動
現代人に増加している傾向
症状別薬膳アプローチ
下痢の時の食養生
基本的な考え方
水分と電解質の補給を優先
胃腸の負担を最小限に抑える
温かく消化の良い食材を選択
少量ずつ頻回に摂取
おすすめ食材
穀物類
白米: 性味が甘・平で胃腸にやさしい
お粥として調理するのが理想
消化が良くエネルギー補給にも適している
もち米: 性味が甘・温で収斂作用があるとされる
下痢止めの民間療法として利用
よく加熱して消化しやすくする
根菜類
山薬(やまいも): 脾胃を補うとされる
消化酵素を含み胃腸をサポート
すりおろして粥に加える
蓮根: 収斂作用があるとされる
止瀉作用があるとされる
すりおろしてスープに加える
調理例:基本の白粥
材料(1人分):
- 白米 大さじ3
- 水 400ml
- 塩 ひとつまみ
作り方:
1. 米をよく洗い、水と一緒に鍋に入れる
2. 強火で沸騰させた後、弱火で40-50分炊く
3. 米粒が完全に崩れるまで炊く
4. 塩で薄く味付けして完成
腹痛の時の食養生
温める食材を重視
胃腸を温めて痛みを和らげる
血行を促進して緊張をほぐす
消化機能をサポートする
リラックス効果も期待
おすすめ食材
香辛料類
生姜: 性味が辛・温で胃腸を温めるとされる
吐き気を抑える作用があるとされる
温かい飲み物に加える
陳皮(みかんの皮): 理気和胃作用があるとされる
気の流れを良くするとされる
お茶として利用可能
調理例:生姜湯
材料(1杯分):
- 生姜 1片
- 蜂蜜 大さじ1
- 熱湯 150ml
作り方:
1. 生姜をすりおろす
2. カップに生姜と蜂蜜を入れる
3. 熱湯を注いでよく混ぜる
4. 温かいうちに飲む
吐き気がある時の食養生
刺激の少ない食材を選択
香りが強すぎないものを選ぶ
温度は人肌程度に調整
水分補給を重視
無理に食べずに胃を休める
おすすめの水分補給
白湯(人肌程度の温度)
薄い番茶やほうじ茶
米のとぎ汁の上澄み
薄い昆布だし
調理例:陳皮茶
材料(1杯分):
- 陳皮 2g
- 熱湯 150ml
作り方:
1. 陳皮を軽く洗う
2. 急須に入れて熱湯を注ぐ
3. 3-5分蒸らして飲む
回復期の段階的食事法
第一段階:水分補給中心期
期間: 症状が激しい初期1-2日
目的: 脱水防止と胃腸の安静
摂取可能な食品
白湯やぬるま湯
薄い番茶
米のとぎ汁
薄い昆布だし
経口補水液(医師の指示により)
避けるべき食品
冷たい飲み物
炭酸飲料
糖分の多い飲み物
カフェインの多い飲み物
アルコール類
第二段階:流動食導入期
期間: 症状が和らいだ2-3日目
目的: 消化の負担を最小限に栄養補給開始
摂取可能な食品
重湯(米の上澄み液)
薄いお粥
野菜スープの上澄み
薄い味噌汁の汁のみ
調理例:重湯
材料(1人分):
- 白米 大さじ2
- 水 500ml
作り方:
1. 米と水を鍋に入れて炊く
2. 弱火で1時間ほど煮込む
3. 上澄み液だけをこし取る
4. 塩で薄く味付け
第三段階:軟食導入期
期間: 症状がほぼ改善した4-5日目
目的: 段階的に固形物を導入
摂取可能な食品
やわらかいお粥
蒸した野菜
豆腐
白身魚(蒸し物)
卵(半熟状態)
調理例:野菜粥
材料(1人分):
- 白米 1/3カップ
- 大根 30g
- 人参 20g
- 水 300ml
- 塩 少々
作り方:
1. 野菜を小さく切る
2. 米と水を鍋に入れて炊く
3. 米が柔らかくなったら野菜を加える
4. 野菜が柔らかくなるまで煮る
5. 塩で味を調える
第四段階:通常食復帰期
期間: 回復後1週間程度
目的: 徐々に通常の食事に戻す
注意して摂取する食品
脂肪分の多い食品は少量から
食物繊維の多い野菜も段階的に
香辛料は控えめに
アルコールは完全回復後に
体質別対処法
脾胃虚寒体質
特徴
もともと胃腸が弱い
冷たいものでお腹を壊しやすい
手足が冷えやすい
疲れやすく食欲不振になりがち
対処法
温性の食材を中心に摂取
生姜、シナモンなどの温める香辛料を活用
冷たい飲み物や生ものは避ける
規則正しい食事時間を心がける
おすすめ食材
生姜、ねぎ、にんにく
もち米、山薬
羊肉、鶏肉(回復期に少量から)
温かいスープや煮物
湿熱体質
特徴
暑がりで汗をかきやすい
脂っこいものでお腹を壊しやすい
口の中が苦く感じることがある
便秘になりやすい
対処法
清熱利湿作用のある食材を摂取
油分や糖分は控えめに
あっさりとした調理法を選択
水分補給を心がける
おすすめ食材
はと麦、冬瓜、きゅうり
緑豆、小豆
白菜、大根
清淡なスープや蒸し物
予防のための日常的な食養生
胃腸を強くする食習慣
基本的な食事のルール
規則正しい食事時間(朝7-8時、昼12-13時、夜18-19時)
腹八分目を心がける
よく噛んでゆっくり食べる(1口30回以上)
食事中は落ち着いた環境を作る
温度に対する注意
極端に熱いものや冷たいものは避ける
人肌程度の温度が胃腸にやさしい
冷蔵庫から出した飲み物は常温に戻してから
氷の入った飲み物は控えめに
季節に応じた胃腸ケア
春(3-5月)
山菜でデトックスをサポート
新陳代謝の活発化に対応
ストレス対策を重視
規則正しい生活リズムの確立
夏(6-8月)
水分補給と電解質バランスを重視
冷房による冷えに注意
食中毒の予防を徹底
清熱作用のある食材を活用
秋(9-11月)
乾燥対策として潤いを補給
免疫力をサポートする食材を摂取
夏の疲れからの回復をサポート
規則正しい食事で胃腸を整える
冬(12-2月)
体を温める食材を中心に
胃腸を冷やさない工夫
滋養強壮作用のある食材で体力維持
風邪予防も兼ねた食養生
お腹を壊さないための生活習慣
食事環境の工夫
リラックスできる食事環境
スマートフォンやテレビを見ながらの食事は避ける
家族や友人との楽しい食事時間を大切に
食事の前に深呼吸してリラックス
感謝の気持ちを持って食事を摂る
衛生管理の徹底
手洗いの習慣を徹底
食材の保存温度と期限を守る
調理器具の清潔を保つ
外食時の店舗選びに注意
ストレス管理
日常的なストレス対策
十分な睡眠時間(7-8時間)の確保
適度な運動習慣の確立
深呼吸や瞑想の時間を作る
趣味や娯楽でリフレッシュ
感情と胃腸の関係
イライラや不安は胃腸に直接影響
感情のコントロール方法を身につける
カウンセリングやコーチングの活用
信頼できる人との相談時間を確保
回復を早めるサポートレシピ
胃腸回復スープ
鶏と大根のやさしいスープ
材料(2人分):
- 鶏胸肉 100g(皮なし)
- 大根 150g
- 人参 50g
- 生姜 1片
- 昆布だし 500ml
- 塩 少々
- 薄口醤油 小さじ1
作り方:
1. 鶏肉は小さく切り、野菜は一口大に切る
2. 生姜は薄切りにする
3. 昆布だしに生姜を入れて火にかける
4. 野菜を加えて柔らかく煮る
5. 鶏肉を加えて火を通し、調味料で味を整える
消化サポート粥
山薬と蓮子の養生粥
材料(2人分):
- 白米 1/2カップ
- 山薬 80g
- 蓮子 10個
- 水 400ml
- 塩 少々
作り方:
1. 蓮子は芯を取り除いて水に浸す
2. 米をよく洗い、蓮子と一緒に鍋に入れる
3. 水を加えて弱火で40分炊く
4. 山薬をすりおろして加える
5. 5分煮て塩で味を調える
水分補給茶
消化促進ブレンド茶
材料(1杯分):
- 陳皮 2g
- 生姜スライス 2枚
- 甘草 1g
- 熱湯 150ml
作り方:
1. すべての材料を急須に入れる
2. 熱湯を注いで5分蒸らす
3. カップに注いで温かいうちに飲む
医療機関受診の目安
緊急性の高い症状
すぐに医療機関を受診すべき症状
血便や黒色便が出る
高熱(38度以上)がある
激しい腹痛が続く
脱水症状(めまい、意識もうろう)
水分も摂取できない状態
症状が急激に悪化する
継続的な観察が必要な症状
数日様子を見ても改善しない場合
軟便や下痢が1週間以上続く
食欲不振が長期間続く
体重減少が著しい
日常生活に支障をきたす
同じ症状を繰り返す
まとめ
お腹を壊した時の薬膳は、体の自然な回復力をサポートする食養生法として活用できます。症状の程度や原因に応じて適切な食材を選び、段階的に食事を調整することで、胃腸の負担を最小限に抑えながら必要な栄養を補給できるでしょう。
最も重要なのは、症状が重い場合や長期間続く場合は、必ず医療機関を受診することです。薬膳は予防と軽度の不調に対するサポート的な役割を果たすものであり、急性症状や重篤な状態の治療を目的とするものではありません。
日頃から胃腸を大切にする食習慣を身につけ、ストレス管理や生活リズムを整えることで、お腹を壊すリスクを軽減することができます。また、体質に応じた食材選びや調理法の工夫により、より効果的な食養生を実践できるでしょう。
古来の知恵を現代に活かしながら、自分の体と向き合い、健やかな胃腸と共に充実した毎日を送ってください。何よりも、無理をせず適切な判断を行うことが最も大切です。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスや治療法ではありません。症状が重い場合や長期間続く場合は、必ず医療機関を受診してください。薬膳の理論は伝統的な考え方に基づくものであり、現代医学とは異なるアプローチであることをご理解ください。



