薬膳で改善する貧血対策|鉄分補給だけじゃない!「血」を増やすレシピと食べ方のコツ
- 道敬 大塚
- 9月25日
- 読了時間: 6分

「めまいや立ちくらみがする」「顔色が悪いと言われる」「疲れやすく、爪が割れやすい」——これらの症状、もしかしたら貧血(東洋医学では「血虚:けっきょ」)が関係しているかもしれません。貧血と言えば鉄分のサプリメントを連想しがちですが、薬膳の考え方では、単に鉄分を補給するだけでは不十分だと考えます。
薬膳が目指すのは、血液そのもの(血)を増やす工場である「脾(ひ:消化器系)」と「肝(かん:血を貯蔵する)」の機能を高めること。つまり、鉄分という「材料」を投入するだけでなく、その材料をしっかり「血」に変え、全身に巡らせる体の仕組みそのものを整えることを重視するのです。
この記事では、薬膳の観点から貧血(血虚)の原因を解説し、血を補い、増やす効果が期待できる食材を使った、簡単で美味しいレシピをたっぷりご紹介します。日々の食事で、体の内側から健やかな血色を育んでいきましょう。
薬膳で考える「貧血(血虚)」~鉄分不足のその先にある根本原因~
西洋医学の「貧血」は、血液中の赤血球やヘモグロビンが不足した状態を指します。一方、東洋医学の「血虚」は、もう少し広い概念で、血液そのものの量が不足したり、その働き(全身を潤す、栄養する)が低下した状態を指します。
血虚の背景には、大きく2つの要因があります。
血の消耗が多い
月経、出産、授乳
慢性的な出血
過度なダイエットや栄養不足
長時間のパソコン作業や目の酷使(目は血と深い関わりがあるとされる)
血を作る力が弱い(「気虚」が根本にある)
これが最も重要なポイントです。消化吸収をつかさどる「脾」の機能が弱っている(脾虚)と、食べ物から十分な栄養(気血)を生み出すことができません。つまり、鉄分を摂っても、それをうまく「血」に変換できない状態です。
したがって、薬膳での貧血改善は、「血を補う食材」と「血を作る脾の機能を高める食材」を組み合わせることが成功のカギとなります。
貧血(血虚)改善のための薬膳的食材選びのポイント
1. 血そのものを補う「補血食材」
文字通り、血の材料となる食材です。鉄分を豊富に含むものもここに含まれます。
レバー(豚、鶏): 貧血対策の王様。吸収率の高いヘム鉄を豊富に含みます。
赤身の肉(牛肉、豚肉)、カツオ、マグロ: 良質なタンパク質とヘム鉄の宝庫。
ほうれん草、小松菜、プルーン: 非ヘム鉄を多く含みます。ビタミンCと一緒に摂取で吸収率アップ。
黒ごま、黒豆、ひじき、黒きくらげ: 中医薬膳では「黒い食材」は血を補うとされ、ミネラルも豊富。
なつめ、枸杞子(くこし)、龍眼肉(りゅうがんにく): 代表的な補血作用のある薬膳食材。甘味があり、料理やお茶に使いやすい。
2. 血を作る力を高める「補気健脾食材」
血を作る工場である「脾」の機能を強化する食材です。これらと補血食材を組み合わせることで相乗効果が生まれます。
米、うるち米、もち米: 脾胃を丈夫にする基本の食材。特に「おかゆ」は最強の養生食。
かぼちゃ、さつまいも、じゃがいも: 自然な甘味が脾を元気にします。
きのこ類(しいたけ、まいたけ): 消化機能を高め、気を補います。
鶏肉、サバ、イワシ: 気を補い、体力をつけるタンパク質源。
生姜、陳皮(ちんぴ): 胃腸の働きを促進し、消化を助けます。
【食べ方のコツ】
冷たいものは控える: 脾は冷えを嫌います。冷たい飲み物や生野菜の摂りすぎは、血を作る機能を低下させます。
よく噛んで食べる: 消化の負担を減らし、栄養の吸収を高めます。
柑橘類やピーマンと組み合わせる: 非ヘム鉄の吸収を高めるビタミンCを一緒に摂りましょう。
今日から作れる!血を増やす薬膳レシピ3選
ここからは、上記のポイントを押さえた、簡単で美味しいレシピをご紹介します。
レシピ1: 【基本の養生食】红枣(なつめ)と黒ごまの鉄分おかゆ
胃に優しく、血を補う食材をシンプルにいただく、最も基本的な薬膳粥です。疲れている日や朝食にぴったり。
材料(2人分):
ご飯 茶碗1杯
水 400ml
なつめ 5粒
黒ごま(すりごま) 大さじ2
生姜 1片
塩 少々
枸杞子(くこし) 少々(仕上げに)
作り方:
なつめは種を取り、細かく刻む。生姜は薄切り。
鍋にご飯、水、刻んだなつめ、生姜を入れて中火にかける。
煮立ったら弱火にし、時々混ぜながら20分ほど煮て、おかゆ状にする。
黒ごまと塩を加えて混ぜ、器に盛る。
仕上げに枸杞子を散らす。
薬膳的ポイント:
なつめ、黒ごま、枸杞子が血を補い、おかゆという形で脾の機能を助けます。生姜が消化を促進します。
レシピ2: 【メインおかず】ほうれん草とレバーの生姜炒め 黒きくらげ添え
鉄分豊富なレバーとほうれん草を、脾の機能を高める生姜と組み合わせた定番メニューに一手間加えて薬膳的にパワーアップ。
材料(2人分):
豚レバー 150g
ほうれん草 1束
生姜 1片
にんにく 1片
乾燥黒きくらげ 5g
酒、醤油 各大さじ1
片栗粉 小さじ1
ごま油 大さじ1/2
作り方:
黒きくらげは水で戻し、食べやすい大きさに切る。ほうれん草は茹でて水気を切り、4cm長さに切る。
レバーは血抜きをし、一口大に切って調味料に10分ほど漬け込む。
フライパンにごま油を熱し、みじん切りにした生姜、にんにくを香りが立つまで炒める。
レバンを加えてさっと炒め、火が通ったら一度取り出す。
同じフライパンに黒きくらげを入れ、さっと炒めたら、ほうれん草と一度取り出したレバンを戻し入れ、全体をさっと和える。
薬膳的ポイント:
レバー、ほうれん草、黒きくらげという鉄分豊富な食材のトリオ。生姜がレバーの臭みを消し、消化を助けます。
レシピ3: 【デザート感覚】血を補う!なつめと龍眼肉のコンポート
おやつや食後のデザートとして、甘いものが欲しくなった時に最適な、血を補う簡単コンポートです。
材料(作りやすい分量):
なつめ 10粒
龍眼肉(りゅうがんにく) 10g
枸杞子(くこし) 大さじ1
水 200ml
はちみつ または 黒糖 お好みで
作り方:
なつめは種を取り、龍眼肉、枸杞子とともに鍋に入れる。
水を注ぎ、火にかける。沸騰したら弱火で10分ほど煮る。
好みではちみつや黒糖で甘味を調え、粗熱が取れたら完成。温かいままでも、冷やしても美味しい。
薬膳的ポイント:
なつめ、龍眼肉、枸杞子は、いずれも血を補う代表的な薬膳食材。特に龍眼肉は心のエネルギーも補い、不安や不眠にも良いとされ、リラックス効果も期待できます。
まとめ:貧血改善は、毎日の食事の積み重ねから
薬膳による貧血改善は、即効性を求めるものではなく、体質そのものを少しずつ変えていく「養生」です。レバーやほうれん草といった鉄分食材だけに注目するのではなく、それらをしっかり血に変えるために、お粥で胃腸を労わり、生姜で消化を助け、温かい料理を中心に食べる——そんな食事の積み重ねが、血色の良い、疲れ知らずの体を作る土台となります。
まずはご紹介したレシピのどれか一つから、今日の食卓に取り入れてみてください。あなたの体が、確実に喜ぶのを感じられるはずです。
※この記事でご紹介した内容は、薬膳の考え方に基づく食養生の一例です。貧血の診断や治療を目的とするものではありません。めまいや立ちくらみなど、気になる症状がある場合は、必ず医師の診断を受け、その指示に従ってください。