薬膳で疲労回復!エネルギー不足の根本原因からアプローチする食べ方のコツ
- 道敬 大塚
- 9月25日
- 読了時間: 6分

「しっかり寝たはずなのに疲れが取れない」「休日もだるくてやる気が起きない」——そんな慢性的な疲労に悩まされていませんか?疲れた時こそ、栄養ドリンクやエナジーバーに手が伸びがちですが、それらは一時的な刺激に過ぎず、根本的な解決にはなりにくいものです。
薬膳の考え方では、疲労は単なるエネルギー不足ではなく、体を動かす根本的な力「気(き)」や、体を潤す「血(けつ)」が不足したり、その流れが滞ったりしている状態と捉えます。つまり、ただ栄養を補給するだけでなく、気や血を生み出す「工場」そのものを元気にすることが、真の疲労回復につながるのです。
この記事では、薬膳の観点から疲労のタイプを見極め、それぞれに合った食べ物や食べ方のコツをご紹介します。特別な食材は必要なく、身近な材料で今日から始められる、体の内側からエネルギーを充電する方法を学びましょう。
薬膳で考える「疲労」の3つのタイプ~あなたの疲れはどれ?~
一言で「疲労」と言っても、その原因は様々。薬膳では、主に以下の3つのタイプに分けて考え、アプローチ法を変えます。
タイプ1: 気虚(ききょ)~エネルギーそのものが足りない~
「気」とは、生命活動を支えるエネルギーのこと。この気が不足している状態が「気虚」です。
【こんな症状はありませんか?】
いつもだるい、倦怠感がある
声に力がない、やる気が出ない
風邪を引きやすい
食後に強い眠気に襲われる
【原因】
過労、睡眠不足、不規則な生活、栄養不足など。
消化吸収をつかさどる「脾(ひ)」の機能が弱っていることが根本にあります。
タイプ2: 血虚(けっきょ)~体を潤す栄養が足りない~
「血」とは、全身に栄養を運ぶ血液やその働き全般を指します。この血が不足している状態が「血虚」です。
【こんな症状はありませんか?】
顔色が悪い、つやがない
めまい、立ちくらみがする
髪がパサつく、爪が割れやすい
不眠、物忘れがひどい
【原因】
出血(生理など)、過度なダイエット、慢性的な病気など。
血を消耗するような生活や、血を作る力(気虚)の低下が関係します。
タイプ3: 気滞(きたい)~エネルギーと栄養の流れが悪い~
気や血は、スムーズに流れてこそ機能します。この流れがストレスなどで滞っている状態が「気滞」です。エネルギーはあるのに、巡っていないため疲労感を感じます。
【こんな症状はありませんか?】
イライラしやすい、憂うつな気分になる
喉や胸、お腹が張った感じがする
ため息が多い
生理前の不調(PMS)が強い
【原因】
精神的ストレス、運動不足、緊張状態が続くことなど。
ご自身の疲れがどのタイプに当てはまるか、チェックしてみてください。多くの場合、これらのタイプが複合していることもあります。
タイプ別!疲労回復におすすめの薬膳食材とレシピ
それでは、それぞれのタイプに効果が期待できる食材と、簡単レシピをご紹介します。
【気虚タイプ】脾の機能を高め、気を補う食べ物
気を生み出す「脾」(消化器系)を元気にする、消化の良い温かい食事が基本です。
おすすめ食材:
米、じゃがいも、かぼちゃ、さつまいも: 脾胃を丈夫にし、気を補う基本の食材。特に「おかゆ」は最強の回復食。
鶏肉、牛肉、サバ、イワシ: 良質なタンパク質で気を補います。
きのこ類(しいたけ、まいたけ): 免疫力を高め、気の流れを整えます。
豆類(大豆、黒豆): 気を補い、脾の機能を強化します。
簡単薬膳レシピ: 「元気チャージ!かぼちゃと鶏肉の甘煮」
材料(2人分): 鶏もも肉 200g、かぼちゃ 1/4個、生姜 1片、红枣(なつめ)5粒、醤油 大さじ1.5、みりん 大さじ1、水 200ml
作り方:
鶏肉は一口大、かぼちゃは種を取り除き、食べやすい大きさに切る。生姜は薄切り。
鍋に鶏肉、かぼちゃ、生姜、なつめ、調味料、水を入れて火にかける。
煮立ったらアクを取り、弱火でかぼちゃが柔らかくなるまで煮込む。
ポイント: かぼちゃと鶏肉で気を補い、生姜とナツメで脾胃の機能を高めます。温かいうちにいただきましょう。
【血虚タイプ】血を補い、体を潤す食べ物
鉄分だけでなく、血そのものを作る材料となる栄養をしっかり摂りましょう。
おすすめ食材:
レバー、赤身の肉、マグロ、カツオ: 良質なヘム鉄を豊富に含み、直接血を補います。
ほうれん草、小松菜、黒ごま、ひじき: 非ヘム鉄やミネラルが豊富。ビタミンCと一緒に摂ると吸収率アップ。
なつめ、枸杞子(くこし)、木耳(きくらげ): 血を補い、顔色を良くする代表的な薬膳食材。
卵、牛乳: 栄養価が高く、血を作るための良質なタンパク源。
簡単薬膳レシピ: 「血色美人!ほうれん草とレバーの生姜炒め」
材料(2人分): 豚レバー 150g、ほうれん草 1束、生姜 1片、にんにく 1片、醤油、酒 各小さじ2、片栗粉 適量
作り方:
レバーは血抜きをし、一口大に切って片栗粉をまぶす。ほうれん草は茹でて水気を切り、4cm長さに切る。
フライパンに油とみじん切りにした生姜、にんにくを入れ、香りを立てる。
レバーを加えてさっと炒め、酒、醤油で味を調える。
最後にほうれん草を加えてさっと和える。
ポイント: レバーで血を直接補い、ほうれん草の鉄分とビタミンでサポート。生姜が胃腸の働きを助けます。
【気滞タイプ】気の流れをスムーズにする食べ物
香りの良い食材(香味野菜、柑橘類)を活用し、ストレスを発散させることを意識しましょう。
おすすめ食材:
春菊、三つ葉、セロリ、パクチー: 独特の香りが気の流れを良くします。
柑橘類(レモン、ゆず、陳皮): 酸味と香りでイライラを鎮め、気の巡りを促進。
ジャスミン茶、ハーブティー: リラックス効果で気分をリフレッシュ。
香菜(シャンツァイ)、紫蘇: 薬味として活用したい気の流れを良くする食材。
簡単薬膳レシピ: 「すっきり!春菊と鶏ささみの香味和え」
材料(2人分): 春菊 1束、鶏ささみ 2本、すりごま 大さじ1、醤油 小さじ2、酢 小さじ1、ごま油 少々
作り方:
春菊は茹でて水気を切り、3cm長さに切る。
鶏ささみは酒を加えた熱湯でゆで、ほぐす。
ボールに調味料を混ぜ合わせ、春菊とささみを和える。
ポイント: 春菊の香りで気の流れを整え、ささみで疲れた体に優しくタンパク質を補給。酸味のある酢も気の巡りを助けます。
すべてのタイプに共通!疲労回復のための薬膳的食事の基本
どのタイプの疲れにも効果的な、基本的な食事の心得をご紹介します。
温かいものを食べる: 冷たい飲食物は消化器官(脾)を冷やし、機能を低下させます。疲れている時ほど、温かいスープや煮物で内側から温めましょう。
よく噛んで食べる: 消化の第一歩は咀嚼です。よく噛むことで脾胃への負担を減らし、栄養の吸収率を高めます。
規則正しい時間に食べる: 不規則な食事は脾胃のリズムを乱し、疲労の原因になります。1日3食、できるだけ決まった時間に食べましょう。
甘いもの・脂っこいものは控えめに: これらは脾胃に負担をかけ、湿気(余分な水分や老廃物)を生み、だるさの原因になります。
まとめ:薬膳の疲労回復は、体の声を聞くことから始まる
薬膳による疲労回復は、画一的な方法ではなく、ご自身の体質やその時の状態に合わせた「オーダーメイド」のアプローチです。まずはご自身の疲れが「気」「血」「気の流れ」のどれに起因するのか、観察することから始めてみてください。
そして、いきなり全てを変えようとせず、まずは「温かいおかゆを一杯食べる」「冷たい飲み物をやめて白湯を飲む」といった小さな習慣から。体が喜ぶ食べ物を選び、よく噛んで味わう。その積み重ねが、疲れ知らずの健やかな体を作る一番の近道です。
※この記事でご紹介した内容は、薬膳の考え方に基づく食養生の一例です。病気の治療を目的とするものではありません。深刻な疲労が続く場合は、必ず医師にご相談ください。