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薬膳と発酵|W相乗効果で体に優しい美味しい健康法

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月22日
  • 読了時間: 5分

薬膳と発酵のイメージ画像

「薬膳」と「発酵」。一見別々のようでいて、実は相性抜群の二人三脚のような関係にあることをご存知でしょうか?古来より伝わる薬膳の智慧と、微生物の力で食材を深化させる発酵の技術を組み合わせることで、単体で食べるよりも、より体に優しく、栄養価が高く、美味しい食べ方を実現できます。この記事では、薬膳と発酵を組み合わせるメリット、具体的な食材の例、そしてご家庭でできる簡単なアレンジ法までを詳しく解説します。

薬膳と発酵はなぜ相性が良いのか?~二つの伝統智慧の融合~

薬膳も発酵食品も、どちらも長い歴史を持つ食の智慧です。この二つを組み合わせることで、以下のような相乗効果が期待できます。

1. 食材の「消化吸収」を高める

薬膳では、食材の栄養をきちんと消化吸収できてこそ、その力が発揮されると考えます。発酵の過程で微生物が食材のタンパク質やデンプンを分解し、アミノ酸や糖に変えるため、元の食材よりも消化吸収がしやすい形に変化します。胃腸が弱っている時や、消化力が落ちている時でも、無理なく栄養を取り入れるサポートが期待できます。

2. 食材の薬膳的性質を「穏やかに」する

食材には、体を強く温めるものや、冷ますものなど、様々な性質があります。発酵過程を経ることで、それらの性質がより穏やかになり、体質を選ばず食べやすくなる場合があります。例えば、体を冷やす作用のある大豆が、発酵して味噌や納豆になると、その性質は平性に近づき、より多くの人に受け入れられやすくなります。

3. 新たな「うま味」と「栄養価」を創出する

発酵により、元の食材にはなかったうま味成分(アミノ酸)や、ビタミン類(特にビタミンB群)などが生成され、栄養価が高まります。薬膳では「美味しく食べる」ことも健康の基本と考えますので、発酵によって深みが出た味わいは、食欲を促進し、心も満たしてくれる効果が期待できます。

4. 腸内環境を整える「益生(よいせい)」の作用

発酵食品に含まれる乳酸菌や麹菌などの微生物(益生菌)は、腸内環境を整えるサポートをします。中医学では、腸は「運化」(消化吸収)をつかさどる重要な器官と考えられており、その腸の状態を整えることは、気血を充実させる根本的な健康法です。発酵食品は、薬膳が目指す「体の内側から整える」アプローチを強力に後押ししてくれます。

薬膳的に見る主な発酵食品とその活用法

ここでは、日本の食卓に身近な発酵食品を、薬膳の観点から解説します。

1. 味噌

  • 薬膳的性質:温性、甘味・鹹味

  • 期待できるサポート

    • 胃腸の働きを助け、気力を補う(補気)。

    • 発汗を促し、体の表面の邪気(風邪など)を払う(解表)。風邪のひき始めの味噌汁は理にかなっています。

  • 薬膳的アレンジ

    • 体を温める生姜ねぎを加えた味噌汁。

    • 気を補うさつまいもかぼちゃの味噌汁。

    • 腸を潤すごぼう大根との相性も抜群。

2. 納豆

  • 薬膳的性質:温性、甘味

  • 期待できるサポート

    • 胃腸の機能を高め(健脾)、気血を生み出すのを助ける。

    • 血流を改善する(活血)サポートも期待できます。

  • 薬膳的アレンジ

    • 気の流れを良くするねぎ大葉と合わせる。

    • 血流サポートに良いお酢を少量加えた酢納豆。

    • 胃腸を温めるしょうがのすりおろしを加える。

3. 醤油

  • 薬膳的性質:寒性(生醬油)、鹹味

  • 期待できるサポート

    • 食材の「毒」を消す作用があるとされ、薬膳の調理でもよく用いられます。

    • 鹹味の「軟堅」作用で、消化を助けます。

  • 薬膳的アレンジ

    • 薬膳料理の基本の調味料として、素材の味を引き立てる。

4. 酢

  • 薬膳的性質:温性、酸味

  • 期待できるサポート

    • 酸味の「収斂」作用で、汗や尿のもれを防ぎ、体内の水分を適切に保つサポートが期待できます。

    • 食欲増進、消化促進の作用も。

  • 薬膳的アレンジ

    • 脂っこい料理と合わせて消化を助ける。

    • 夏バテで食欲がない時のドレッシングに。

5. 甘酒

  • 薬膳的性質:温性、甘味

  • 期待できるサポート

    • 米麹の甘酒は「飲む点滴」とも言われ、胃腸に負担をかけずに気と津液(水分)を補い、体力を回復させるサポートに最適です。

  • 薬膳的アレンジ

    • 体を冷やさないように、常温または温めて飲む。

    • 生姜汁を数滴落とすと、温める作用がアップ。

ご家庭で今日からできる!薬膳×発酵の簡単アレンジ

  1. 基本は「発酵調味料」を使いこなす味噌、醤油、酢、みりんなどの発酵調味料を常備し、薬膳の考え方(例えば、体を温めたい時は生姜と組み合わせる)に沿って料理に使うだけで、立派な薬膳×発酵の実践になります。

  2. 薬膳食材を発酵調味料に漬け込む生姜のはちみつ漬け(はちみつも蜜蜂による発酵食品)、金桔の味噌漬け、黒豆の醤油漬けなど、薬膳的に良い食材を発酵調味料で漬け込むことで、パワーアップした食材を作ることができます。

  3. 麹を活用する「塩麹」「醤油麹」麹は発酵のパワーそのもの。お肉や魚を塩麹に漬け込 むと、うま味が増し、消化も良くなります。野菜を醤油麹で和えれば、立派な一品に。

薬膳と発酵を組み合わせる際の注意点

  • 過剰摂取は避ける:発酵食品は塩分が高いものもあります。美味しいからといって食べ過ぎず、バランスよく取り入れましょう。

  • 体質に合わせて選ぶ:例えば、もともと胃腸が熱く、のどが渇きやすい方は、塩分の高い味噌や醤油の摂りすぎに注意しましょう。

  • 薬膳は食品です:発酵食品も薬膳の一部であり、医薬品ではありません。健康維持のためのものとお考えください。

まとめ:二つの智慧の融合が生む、美味しい健康習慣

薬膳と発酵は、どちらも「自然の力を借りて、体を内側から整える」という共通の思想を持っています。

発酵の力で食材をより消化吸収しやすく、栄養価を高め、美味しく変身させ、それを薬膳の理論に基づいて体調に合わせて食べる。この組み合わせは、理にかなった最強の健康法の一つと言えるでしょう。ぜひ、ご家庭の冷蔵庫にある発酵食品を、今日から少しだけ薬膳の視点で見つめ直し、美味しくて体に優しい食卓を築いてみてください。

免責事項:本記事でご紹介した内容は、中医学(薬膳)の知識に基づく一般的な情報です。効果・効能を保証するものではなく、医療行為を目的としたものではありません。体調に不安がある場合や治療中の方は、必ず医師や専門家にご相談ください。

 
 
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