薬膳の宝石クコの実!古来から愛される赤い実の伝統的な活用法
- 道敬 大塚
- 9月24日
- 読了時間: 9分

はじめに
鮮やかな赤色が美しいクコの実は、数千年にわたって中国をはじめとする東アジア地域で愛され続けてきた薬膳食材です。現代では「ゴジベリー」の名前でスーパーフードとしても注目を集めていますが、その歴史は古く、中医学の古典的な文献にも数多く記載されています。小さな実に秘められた豊富な栄養素と、薬膳における伝統的な位置づけについて、詳しく探ってみましょう。
クコの実の基本情報
植物学的特徴
クコ(枸杞、学名:Lycium barbarum)は、ナス科クコ属の落葉低木です。中国北西部が原産地とされ、現在では世界各地で栽培されています。
基本的な特徴
高さ:1-3メートル程度
花:紫色の小さな花を咲かせる
果実:楕円形で鮮やかな赤色
収穫時期:夏から秋にかけて
栽培地域:中国、チベット、モンゴル、日本など
クコの実の種類
主要な品種
寧夏クコ: 中国寧夏回族自治区産、最高品質とされる
内蒙古クコ: 内モンゴル産、大粒で甘みが強い
青海クコ: 青海省産、高地栽培で品質が良い
新疆クコ: 新疆ウイグル自治区産、乾燥気候で栽培
薬膳におけるクコの実の位置づけ
中医学的性質
薬膳の理論では、クコの実は以下のような性質を持つとされています:
四気五味
性味: 甘・平
帰経: 肝・腎・肺経
功能: 滋補肝腎、益精明目、润肺止咳
薬膳における分類
補益類: 身体を補養する食材カテゴリー
平性食材: 温めも冷やしもしない穏やかな性質
甘味食材: 補養・調和作用があるとされる
古典文献での記載
クコの実は多くの中医学古典に登場します:
「神農本草経」(1-2世紀) 上品(無毒で長期服用可能)に分類され、「久服堅筋骨、軽身不老」と記載されています。
「本草綱目」(明代) 李時珍により「滋腎、潤肺、明目」の作用があるとされました。
「食療本草」(唐代) 食材としての利用法が詳しく記載されています。
現代栄養学から見たクコの実
主要栄養成分
現代の分析技術により、クコの実の豊富な栄養成分が明らかになっています:
ビタミン類
ビタミンA: βカロテンとして豊富に含有
ビタミンC: 柑橘類を上回る含有量
ビタミンE: 抗酸化作用が期待される
ビタミンB群: B1、B2、B6など
ミネラル類
鉄分: 植物性食品としては豊富
亜鉛: 微量栄養素として重要
セレン: 抗酸化作用が研究されている
カルシウム: 骨の健康に関わる
特有成分
ゼアキサンチン: 目の健康に関わるカロテノイド
ベタイン: アミノ酸系化合物
ポリサッカライド: 多糖類の一種
フラボノイド: 植物性ポリフェノール
現代研究の状況
世界各国でクコの実に関する研究が進められています:
研究分野
栄養成分の分析と機能性評価
抗酸化作用に関する基礎研究
食品としての安全性評価
栽培技術の改良研究
ただし、これらの研究の多くは基礎研究段階であり、人への具体的な影響については個人差があることを理解しておくことが大切です。
体質別クコの実の活用法
中医学的体質分類
薬膳では、個人の体質に応じた食材選択が重要とされます。クコの実は平性で甘味のため、多くの体質の方に適しているとされています。
肝腎陰虚体質の方
目の疲れや乾燥が気になる方
腰や膝の疲れを感じやすい方
夜間の寝汗が多い方
肌の乾燥が気になる方
気血不足体質の方
疲れやすく元気が出ない方
顔色が悪いと感じる方
集中力が続かない方
食欲不振になりがちな方
肺燥体質の方
空咳が出やすい方
のどの乾燥感が気になる方
肌荒れしやすい方
秋冬の乾燥が苦手な方
季節別クコの実の活用法
春のクコの実活用法
春は肝の季節とされ、デトックスと新陳代謝が活発になる時期です。
春におすすめの摂取方法
薄めのお茶として水分補給と合わせて
春野菜との組み合わせで栄養バランスアップ
少量を継続的に摂取
他の山菜と合わせてデトックス効果をサポート
春のクコの実レシピ:春野菜とクコの実のスープ
材料:春キャベツ、アスパラガス、クコの実、昆布だし
調理法:野菜を軽く煮て、最後にクコの実を加える
ポイント:クコの実は長時間煮込まず、食感を残す
夏のクコの実活用法
夏は心の季節とされ、暑さによる体力消耗が気になる時期です。
夏におすすめの摂取方法
冷たい飲み物に加えて清涼感をプラス
サラダのトッピングとして
アイスティーに浸して香りと栄養をプラス
水分補給のサポートとして
夏のクコの実レシピ:クコの実入り白木耳デザート
材料:白きくらげ、クコの実、氷砂糖、水
調理法:白きくらげを煮てトロトロにし、クコの実を加える
ポイント:冷やして食べると夏にぴったりのデザート
秋のクコの実活用法
秋は肺の季節とされ、乾燥対策が重要な時期です。
秋におすすめの摂取方法
潤いを補う食材との組み合わせ
温かい飲み物で体を内側から温める
肺を潤すとされる白い食材との組み合わせ
免疫力サポートを意識した摂取
秋のクコの実レシピ:梨とクコの実のコンポート
材料:梨、クコの実、蜂蜜、シナモン
調理法:梨を煮てクコの実と調味料で仕上げる
ポイント:秋の乾燥対策として潤いをプラス
冬のクコの実活用法
冬は腎の季節とされ、エネルギーを蓄える時期です。
冬におすすめの摂取方法
温性の食材と組み合わせて体を温める
滋養強壮をサポートする食材との組み合わせ
温かいお粥やスープに加える
保温効果のある調理法での摂取
冬のクコの実レシピ:クコの実入り薬膳粥
材料:米、クコの実、なつめ、生姜、鶏肉
調理法:すべての材料を一緒に炊き込む
ポイント:体を温め、滋養を補う冬の定番料理
クコの実の日常的な取り入れ方
基本的な下処理方法
乾燥クコの実の準備
軽く水で洗って汚れを落とす
ぬるま湯で5-10分浸して戻す
柔らかくなったら水気を切る
そのまま食べるか料理に使用
生のクコの実の場合
流水でよく洗う
へたを取り除く
そのまま食べるか乾燥保存
摂取量の目安
1日の摂取目安量
乾燥クコの実:10-20粒程度
生のクコの実:30-40粒程度
摂取のタイミング
朝食時:一日のスタートに栄養補給
午後のおやつ時:エネルギー補給として
夕食後:消化を助ける意味で少量
美味しい摂取方法
お茶として
熱湯にクコの実を入れて5分蒸らす
他のハーブとブレンドして風味を楽しむ
蜂蜜を加えて甘みをプラス
トッピングとして
ヨーグルトにのせて朝食に
サラダの彩りとアクセントに
グラノーラやシリアルに混ぜて
お料理に
炊き込みご飯の具材として
中華料理の薬膳食材として
スープや煮物の仕上げに
クコの実を使った薬膳レシピ集
朝食におすすめ:クコの実入り薬膳粥
材料(2人分)
白米: 1/2カップ
クコの実: 大さじ1
なつめ: 3個
蓮の実: 10個
水: 3カップ
塩: 少々
作り方
米は洗って30分水に浸す
なつめは種を除き、蓮の実は芯を取る
すべての材料を鍋に入れ弱火で40分炊く
最後にクコの実を加えて5分煮る
塩で味を調えて完成
おやつにおすすめ:クコの実とナッツのエナジーボール
材料(20個分)
デーツ: 200g
アーモンド: 50g
クコの実: 30g
ココナッツフレーク: 大さじ2
シナモンパウダー: 小さじ1
作り方
デーツは種を除き、フードプロセッサーでペースト状にする
アーモンドは粗く砕き、クコの実と混ぜる
すべての材料を混ぜ合わせる
一口大に丸めてボール状にする
冷蔵庫で30分冷やして完成
夕食におすすめ:クコの実入り蒸し鶏
材料(4人分)
鶏もも肉: 2枚
クコの実: 大さじ2
長ネギ: 1本
生姜: 1片
紹興酒: 大さじ2
醤油: 大さじ1
ごま油: 小さじ1
作り方
鶏肉は一口大に切り、調味料で下味をつける
長ネギは斜め切り、生姜は薄切りにする
蒸し器に鶏肉と野菜を入れる
クコの実を散らして15分蒸す
仕上げにごま油をかけて完成
デザートにおすすめ:クコの実入り杏仁豆腐
材料(4人分)
牛乳: 400ml
砂糖: 40g
ゼラチン: 5g
アーモンドエッセンス: 数滴
クコの実: 大さじ2
水: 大さじ2
作り方
ゼラチンは水でふやかす
牛乳を温め砂糖を溶かす
ゼラチンを加えて溶かし、アーモンドエッセンスを加える
型に流し入れ冷蔵庫で冷やし固める
クコの実を飾って完成
購入・保存・品質の見分け方
良質なクコの実の選び方
外観での判断
色:鮮やかな赤色または橙赤色
形:ふっくらとして皺が少ない
大きさ:粒が揃っている
表面:艶があり、カビや変色がない
品質表示の確認
原産地の明記(寧夏産が最高級とされる)
収穫年の新しいもの
有機栽培の表示があるもの
添加物や保存料の使用状況
適切な保存方法
開封前の保存
直射日光を避ける
湿度の低い場所で保管
温度変化の少ない場所
密封された状態を保つ
開封後の保存
密閉容器に移し替える
冷蔵庫での保存が理想
乾燥剤を入れて湿度をコントロール
3-6ヶ月以内に使い切る
注意すべきポイント
摂取時の注意事項
体質による注意
体が熱っぽい時は摂取を控える
消化機能が弱い方は少量から始める
アレルギー体質の方は初回は少量で様子を見る
妊娠・授乳期の方
医師に相談してから摂取を検討
過剰摂取は避ける
体調の変化に注意を払う
お子様への注意
3歳未満は避ける
小さなお子様は誤嚥に注意
保護者の監督下で摂取
薬との相互作用
現在医薬品を服用中の方は、クコの実を摂取する前に医師または薬剤師に相談することをおすすめします。特に血糖値や血圧に関わる薬を服用中の方は注意が必要です。
過剰摂取のリスク
適量摂取の重要性
1日の目安量を守る
体調の変化を観察する
異常を感じたら摂取を中止
継続的な大量摂取は避ける
まとめ
クコの実は、数千年の歴史を持つ薬膳食材として、現代でもその価値が認められ続けています。小さな赤い実に含まれる豊富な栄養素と、中医学の理論に基づいた穏やかな性質により、多くの人々の健康的な生活をサポートしてくれる可能性があります。
薬膳の知恵に基づいた季節や体質に応じた活用法を理解することで、クコの実をより効果的に日常生活に取り入れることができるでしょう。お茶として、料理の食材として、おやつとして、様々な方法で楽しめるのもクコの実の魅力の一つです。
ただし、クコの実も万能ではありません。バランスの取れた食事、適度な運動、十分な睡眠といった基本的な生活習慣があってこそ、その良さを実感できるものです。また、体質や体調による個人差もありますので、自分の体の声に耳を傾けながら、無理のない範囲で取り入れることが大切です。
古来から「不老長寿の実」とも呼ばれたクコの実。現代の忙しい生活の中で、この小さな赤い実が、あなたの健康的な毎日を彩る一助となることを願っています。
この記事は一般的な情報提供を目的としており、医学的なアドバイスではありません。健康に関する具体的なご相談は、医療専門家にお尋ねください。薬膳の理論は伝統的な考え方に基づくものであり、現代医学とは異なるアプローチであることをご理解ください。



