top of page
検索

薬膳スープは体のための養生食。期待できる働きと基本の考え方

  • 執筆者の写真: 道敬 大塚
    道敬 大塚
  • 9月24日
  • 読了時間: 6分

薬膳スープ効果のイメージ画像

冷え性の方、疲れが抜けにくい方、季節の変わり目に不調を感じやすい方——。そんな方々の間で注目を集めているのが「薬膳スープ」です。

「薬膳」と聞くと、「難しそう」「特別な材料が必要」というイメージを持たれるかもしれません。しかし、薬膳スープの本質は、とてもシンプル。毎日食べる食材の持つ力を引き出し、スープという形で体に優しく取り入れ、健やかな状態を目指す「食養生」の一つです。

本記事では、薬膳スープの基本的な考え方と、どのように体に働きかけるのかを解説します。お伝えするのは特定の病気を治すための「治療」ではなく、あくまで健康な方が、より良いコンディションを保つための「体質管理」のヒントです。体を内側から温め、整える薬膳スープの世界に触れて、ご自身の健康づくりの参考にしていただければ幸いです。

薬膳スープとは?~「スープ」が持つ3つの利点~

薬膳とは、東洋医学(中医学)の理論に基づき、体質や体調、季節に合わせて食材を選び、バランスを整える食事法です。その考え方を「スープ」という形に落とし込んだものが薬膳スープです。

なぜスープが良いのでしょうか? それはスープならではの以下のような利点があるからです。

1. 消化吸収が良く、胃腸に優しい

スープは、食材の栄養分が溶け出した液体をいただくため、固形物を消化するのに比べて胃腸への負担が非常に少ない形態です。特に食欲がない時、病み上がり、胃腸が弱っている時でも、効率よく栄養を摂取することができます。

2. 素材の栄養を余すところなく摂取できる

煮込む過程で食材から流れ出たビタミン、ミネラル、うま味成分を、汁ごと全て摂ることができます。この点が、茹で汁を捨ててしまう調理法とは大きく異なり、栄養を無駄にしません。

3. 体を芯から温め、潤いを与える

温かいスープは、冷えた体を芯から温め、血液循環を促進します。また、スープ自体が水分補給となり、乾燥しがちな体に潤いを与える効果も期待できます。これは薬膳で重要視される「気・血・水(き・けつ・すい)」の巡りを良くすることにつながります。

薬膳スープがもたらす、体へのやさしい働きかけ

薬膳スープは医薬品ではないため、「これを飲めばこの症状が治る」という即効性や効能を謳うことはできません。しかし、続けることで、体のベースを整え、不調を感じにくい体質へと導く「サポート」が期待できます。主に以下のような働きが考えられます。

1. 体を温め、冷えの改善をサポートする(気血の巡りを良くする)

冷えは、血行不良やエネルギー(気)の不足が原因で起こります。薬膳スープでは、体を温める性質を持つ食材(生姜、ねぎ、にんにく、羊肉、エビなど)をベースに使うことで、内側からじんわりと熱を生み出し、全身の気血の巡りを良くする手助けをします。

2. 消化機能を助け、栄養吸収を高める(脾胃を強くする)

薬膳において、消化器系(脾胃)は、食べ物からエネルギーや栄養(気血)を作り出す工場のようなもの。この脾胃の機能が弱ると、疲れやすく、免疫力も低下しがちです。薬膳スープは、消化そのものが楽なだけでなく、山芋、かぼちゃ、大根、生姜など、脾胃の働きを助ける食材を組み合わせることで、消化吸収力を高めるサポートをします。

3. 不足した栄養と潤いを補給する(気血水を補う)

忙しい日常やストレス、加齢などにより、体は知らず知らずのうちにエネルギー(気)や栄養(血)、潤い(水)を消耗しています。薬膳スープは、鶏肉、牛肉、レバー、卵、黒ごま、クコの実など、これらの不足を補う食材を煮込むことで、消耗したものをゆっくりと補給するお手伝いをします。

4. 心を落ち着かせ、リラックス効果をもたらす(安神作用)

温かいスープをゆっくりと飲む行為そのものが、心を落ち着かせるリラックスタイムとなります。さらに、百合根、蓮の実、小麦などには、精神を安定させる「安神(あんしん)」作用があるとされ、こうした食材を使ったスープは、ストレスによるイライラや不眠の緩和にも役立つかもしれません。

初心者でも大丈夫!基本の薬膳スープレシピ「養生チキンスープ」

特別な材料は一切使いません。スーパーで手に入る食材で作れる、胃腸を温め、元気を補う基本のスープをご紹介します。

【気血を補い、体を温める】基本の養生チキンスープ

<材料(4人分)>

  • 鶏手羽元…8本

  • 生姜…1片(親指大)

  • 長ねぎ(青い部分も)…1本

  • にんにく…1片

  • 酒…大さじ2

  • 水…1.5リットル

  • 塩…適量

<作り方>

  1. 鍋に湯を沸かし、鶏手羽元を入れてサッと茹でて、表面の汚れや臭みを取る(豚骨なら10分ほど茹でこぼす)。

  2. 大きめの鍋に水、酒、皮をむいて包丁の背で軽くたたいた生姜、ねぎ(青い部分は結ぶ)、にんにくを入れ、沸騰させる。

  3. ①の鶏肉を加え、再度沸騰したら弱火にして、アクを取りながら1時間~1時間半ほどコトコトと静かに煮込む。

  4. 鶏肉からうま味とコラーゲンがしっかり出て、スープが濁ってきたら火を止める。

  5. 塩で味を調えて完成。好みで小口切りのねぎ(白い部分)を散らす。

<薬膳的ポイント>

  • 鶏肉: 気を補い、脾胃の機能を高め、体力をつける代表的な食材です。

  • 生姜: 体を温め、冷えを取り、消化を促進する作用があります。

  • ねぎ: 体を温めて発汗を促し、気の流れを良くします。

  • にんにく: 気血の巡りを良くし、体を温める力が強い食材です。

このスープは、疲れた時、風邪のひき始め、冷えが気になる時に最適です。シンプルな味わいなので、そのまま飲むのはもちろん、雑炊やうどんのつゆとしても活用できます。

薬膳スープを美味しく続けるためのヒント

  • 自分の体調と相談する: 体が熱っぽいときは生姜を控えめにするなど、その日の体調に合わせて素材を微調整しましょう。

  • 「一物全体」を意識する: 食材は皮や根っこもできるだけ丸ごと使うことで、栄養を余すところなく摂取できます。ねぎの青い部分も立派な薬味になります。

  • よく噛むように意識して飲む: スープも、口中でよく噛むようにして味わうことで、消化吸収が促進され、満腹中枢も刺激されます。

  • 無理をしない: あくまで食事の一部です。毎日続けられなくても、週末にまとめて作るなど、ご自身のライフスタイルに合わせて取り入れましょう。

まとめ:薬膳スープは、体をいたわるための「丁寧な時間」

薬膳スープは、即効性を求めるものではなく、体と向き合い、労わるための「丁寧な時間」そのものです。素材の選択から、コトコトと煮込む時間、そして体が温まるのを感じながらいただく瞬間まで、全てが養生の一部です。

「効果」を急ぐのではなく、まずは一本の養生チキンスープから始めてみてください。体が喜ぶひとときが、健やかな毎日の積み重ねにつながっていくはずです。

 
 
bottom of page