薬膳茶とは?初心者のための選び方とおすすめの楽しみ方
- 道敬 大塚
- 9月22日
- 読了時間: 6分

薬膳茶と聞くと、「体に良さそうだけど難しそう」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、薬膳茶の基本はとてもシンプル。毎日のお茶をほんの少し意識するだけで、あなたの体調や季節に合った、より健やかな毎日をサポートしてくれるのです。この記事では、薬膳茶の基礎知識から、ご自身にぴったりの薬膳茶の選び方、今日からできる美味しい楽しみ方までを詳しくご紹介します。
薬膳茶とは?中医学の知恵が詰まった飲み物
薬膳茶とは、中国に古くから伝わる中医学(中国传统医学)の考え方に基づいてブレンドされたお茶のことです。医食同源の思想のもと、単なる水分補給やリラックスのためだけでなく、ご自身の体質や体調、季節に合わせて食材を選び、日々の健康をサポートすることを目的としています。
「薬」という字が入っていますが、医薬品ではなく、あくまで食品の範疇にある飲み物です。ドラッグストアで購入できる医薬品の「お茶」とは異なり、特定の病気を治療するものではありません。普段の食生活を補い、整えるためのものとお考えください。
薬膳茶の3つの特徴
オーダーメイド性が高い薬膳茶の最大の特徴は、その人その時の状態(「証」といいます)に合わせて素材を選べることです。例えば、「今日は疲れ気味だな」と感じれば気力を補う素材を、「むくみが気になる」と思えば水分代謝を促す素材を選ぶなど、きめ細やかなアプローチが可能です。
自然の素材そのものの力薬膳茶では、茶葉だけでなく、ハーブ、果実、花、根菜、木の実など、多岐にわたる自然の素材(生薬)を組み合わせます。それぞれの素材が持つ自然な性質や味、香りを活かしてブレンドされ、合成添加物は基本的に使用されません。
季節の変化に対応中医学では、体と季節は深く結びついていると考えます。薬膳茶は、暑い夏には体の熱を冷ます素材を、乾燥する秋には肺や喉を潤す素材を選ぶなど、季節の変化に順応した体作りをサポートします。
薬膳茶の基本的な考え方:素材の「性味」を理解する
薬膳茶を選ぶ上で知っておきたいのが、素材の「性味(せいみ)」です。これは、素材が体にどのような影響を与えるかを表す基本的な概念です。
五性(ごせい):素材が体を温めるか冷ますか
素材は、体を温める度合いによって5つの性質(寒・涼・平・温・熱)に分類されます。
寒性・涼性:体のほてりや熱を冷ます性質(例:ミント、菊花、クコの葉、緑茶)
適す人:のぼせ気味、イライラ、口が渇く方、暑い季節に
平性:どちらにも偏らず、穏やかに作用する性質(例:はとむぎ、大豆、黒豆、甘草)
適す人:どの体質の方にも、年間を通して
温性・熱性:体を内側から温め、血行を促進する性質(例:生姜、シナモン、紅棗、陳皮)
適す人:冷え性、疲労感、気力不足の方、寒い季節に
五味(ごみ):5つの味とその働き
素材の味は「酸・苦・甘・辛・鹹(しおからい)」の5つに分けられ、それぞれ異なる働きがあると考えられています。
酸味:引き締める作用(汗や尿のもれを防ぐ)
苦味:冷ます、燥わす作用(余分な熱や水分を除く)
甘味:補う、和らげる作用(気力を補い、痛みを緩和する)
辛味:散らす、通す作用(気血の巡りを良くする)
鹹味:軟らかくする作用(しこりを散らす)
薬膳茶は、この「五性」と「五味」のバランスを考えながらブレンドすることが重要です。
症状別・おすすめの薬膳茶素材
ご自身の気になるお悩みに合わせて、以下のような素材を参考にしてみてください。
疲労、気力不足が気になる方へ
紅棗(こうそう):天然の甘味で、気血を補い、胃腸の働きを助けます。
クコの実(ゴジベリー):目や肝臓の疲れによいとされ、滋養強壮に。
朝鮮人参:気力を補い、疲労感の緩和をサポートします。
冷え性が気になる方へ
生姜(しょうきょう):体を芯から温め、冷えによる腹痛や吐き気を和らげます。
シナモン:血行を促進し、体を温める作用があります。
黒糖:ミネラル豊富で、血液を作るサポートをし、体を温めます。
むくみが気になる方へ
はとむぎ:体内の余分な水分代謝を促し、むくみの改善をサポートします。
小豆(あずき):利尿作用があり、むくみ取りに昔から用いられています。
ストレス、イライラが気になる方へ
菊花:頭や目の熱を冷まし、リラックス効果が期待できます。
玫瑰(まいかい)バラの花:気の巡りを良くし、イライラを鎮めます。
陳皮(ちんぴ):橘の皮を干したもの。気の流れを整え、胃腸の働きも助けます。
乾燥が気になる方へ
百合根(びゃくごうこん):肺を潤し、咳や喉の乾燥を和らげます。
杏仁(きょうにん):呼吸器系を潤す作用があります。
薬膳茶を美味しく楽しむ3つの方法
基本の煎じ方薬膳茶の素材によっては、成分を抽出しやすくするために少し加熱したほうが良い場合があります。やかんや土鍋に素材と水(1リットルに対し、素材20〜30gが目安)を入れ、弱火で15〜20分程度ゆっくり煎じると、素材のエキスがしっかり抽出されます。
手軽なポット淹れお湯を注いで抽出するタイプの素材(花類や葉もの)は、急須やポットで手軽に楽しめます。熱いお湯を注ぎ、蓋をして3〜5分ほど蒸らせば完成です。
アレンジ楽しみはちみつや黒糖を加えると、飲みやすくなり、甘味の「補う」作用がプラスされます。レモンやオレンジの皮を加えると、さわやかな風味になり、酸味の「引き締める」作用が期待できます。冷やしてアイス茶としても美味しくいただけます。
薬膳茶を選ぶ際の注意点
薬膳茶は食品です:病気を治療するものではありません。現在通院中や服薬中、妊娠中・授乳中の方は、かかりつけ医に相談の上、お楽しみください。
ご自身の体質に合うものを:体を冷やす素材(涼性・寒性)と温める素材(温性・熱性)では作用が異なります。冷え性の方が涼性の素材ばかりを摂取すると、かえって体調を崩す可能性もあります。
美味しく続けることを第一に:「体に良いから」と無理して飲み続ける必要はありません。まずは香りや見た目で気になるもの、美味しそうだと思うものから試してみるのが長続きのコツです。
まとめ:薬膳茶は毎日を慈しむための習慣
薬膳茶とは、中医学の知恵を借りて、ご自身の体と向き合い、労わる時間を作るためのものです。難しく考える必要はなく、まずは1杯のお茶から始めてみましょう。今日の自分の体調はどうかな?と問いかけながら、ぴったりの1杯を見つけるプロセスそのものを楽しんでください。毎日を健やかに、豊かに過ごすための手軽なサポーターとして、薬膳茶を生活に取り入れてみてはいかがでしょうか。
免責事項:本記事でご紹介した内容は、中医学の知識に基づく一般的な情報であり、個々人の体質を保証するものではありません。効果・効能を謳うものではなく、医療行為を目的としたものではありません。体調に不安がある場合や治療中の方は、必ず医師や専門家にご相談ください。



