薬膳茶の特性を知ろう|中医学の視点から見る食材の性質と活用法
- 道敬 大塚
- 9月22日
- 読了時間: 9分

「薬膳茶にはどのような特性があるの?」「それぞれの食材にはどんな性質があるの?」そんな疑問をお持ちではありませんか?薬膳茶は中国の伝統医学(中医学)に基づいた食材の組み合わせで作られており、それぞれの食材には独特の性質があるとされています。この記事では、薬膳茶の食材特性について、中医学の観点から初心者にもわかりやすく詳しく解説します。
薬膳茶の基本的な考え方
中医学における食材の性質
中医学では、すべての食材に「性質」があると考えられています。これは現代の栄養学とは異なる視点で、食材が体に与える影響を体系化したものです。
食材の基本的な性質分類:
四気(しき):温熱・平・寒涼の性質
五味(ごみ):酸・苦・甘・辛・鹹の味の性質
帰経(きけい):どの臓腑に作用するかの性質
昇降浮沈:体内での動きの方向性
これらの性質を理解することで、自分の体質や体調に合った薬膳茶を選ぶことができるとされています。
薬膳茶における「補瀉(ほしゃ)」の概念
補(ほ)の作用:
不足しているものを補う
体力やエネルギーをサポートする
弱っている機能を助ける
長期的な体質改善を目指す
瀉(しゃ)の作用:
余分なものを取り除く
滞っているものを流す
過剰な熱を冷ます
バランスを整える
薬膳茶では、この「補瀉」のバランスを考えて食材を組み合わせます。
代表的な薬膳食材の特性
補気系食材(エネルギーをサポート)
ナツメ(大棗)の特性:
性質:温性、甘味
中医学的特性:気を補い、血を養うとされる
適用場面:疲労感がある時、食欲不振の時
組み合わせ:生姜と合わせて温め作用をアップ
注意点:甘味が強いので摂りすぎに注意
人参(朝鮮人参・高麗人参とは異なる一般的な人参)の特性:
性質:平性、甘味
中医学的特性:脾胃の働きを助けるとされる
適用場面:消化不良の時、体力回復したい時
組み合わせ:ナツメと合わせて補気作用をアップ
注意点:体質に合わない場合は少量から始める
補血系食材(栄養循環をサポート)
クコの実(枸杞子)の特性:
性質:平性、甘味
中医学的特性:肝腎を補い、目を明らかにするとされる
適用場面:目の疲れを感じる時、夜更かしが多い時
組み合わせ:菊花と合わせて目のケアに
注意点:体を温める性質があるので、のぼせやすい人は注意
ローズ(玫瑰花)の特性:
性質:温性、甘味・微苦味
中医学的特性:気血の巡りを促すとされる
適用場面:ストレスを感じる時、気分が沈む時
組み合わせ:ハイビスカスと合わせて美容茶に
注意点:香りが強いので、好みに合わせて量を調整
理気系食材(巡りをサポート)
陳皮(みかんの皮)の特性:
性質:温性、辛味・苦味
中医学的特性:気の巡りを促し、痰を化すとされる
適用場面:胸のつかえ感がある時、消化不良の時
組み合わせ:生姜と合わせて消化促進に
注意点:乾燥が不十分だと苦味が強くなることがある
薄荷(ミント)の特性:
性質:涼性、辛味
中医学的特性:疏散風熱、清利頭目とされる
適用場面:頭がすっきりしない時、暑い季節
組み合わせ:菊花と合わせて清涼感をアップ
注意点:冷え性の人は摂りすぎに注意
清熱系食材(体の熱を冷ます)
菊花の特性:
性質:微寒性、甘味・苦味
中医学的特性:清熱解毒、平肝明目とされる
適用場面:目が充血している時、のぼせを感じる時
組み合わせ:クコの実と合わせて目のケアに
注意点:体を冷やす性質があるので、冷え性の人は注意
ハイビスカス(洛神花)の特性:
性質:涼性、酸味
中医学的特性:清熱利湿、生津止渇とされる
適用場面:暑い季節、のどの渇きを感じる時
組み合わせ:ローズヒップと合わせてビタミン補給に
注意点:酸味が強いので胃腸の弱い人は注意
温陽系食材(体を温める)
生姜の特性:
性質:温性、辛味
中医学的特性:温中散寒、発汗解表とされる
適用場面:体の冷えを感じる時、消化不良の時
組み合わせ:ナツメと合わせて温め作用をアップ
注意点:刺激が強いので妊娠中は医師に相談
シナモン(桂皮)の特性:
性質:大熱性、甘味・辛味
中医学的特性:補火助陽、引火帰元とされる
適用場面:手足の冷えがひどい時、エネルギー不足の時
組み合わせ:生姜と合わせて温め作用を強化
注意点:温め作用が強いので、のぼせやすい人は避ける
体質別薬膳茶の特性活用法
気虚体質(疲れやすいタイプ)の特性活用
体質の特徴:
疲れやすい、息切れしやすい
風邪をひきやすい
消化不良を起こしやすい
気力が続かない
おすすめ食材の特性:
ナツメ:気を補う甘味の食材
甘草:他の食材の作用を調和する
白朮:脾胃の機能をサポートする
黄耆:気を補い、表を固める
避けたい食材の特性:
大根:気を下ろす作用が強い
緑茶:カフェインで気を消耗する可能性
血虚体質(栄養不足タイプ)の特性活用
体質の特徴:
顔色が悪い、唇の色が薄い
髪がパサつく、爪が割れやすい
めまいを起こしやすい
眠りが浅い
おすすめ食材の特性:
クコの実:肝血を補う甘味の食材
ローズ:血の巡りを促す温性食材
竜眼肉:心血を補う甘味食材
当帰:血を補い、血行を促進する
避けたい食材の特性:
菊花:血を消耗する可能性がある涼性食材
ハイビスカス:体を冷やす酸味の食材
陰虚体質(潤い不足タイプ)の特性活用
体質の特徴:
のどが渇きやすい、口が乾く
肌が乾燥しやすい
手足がほてる
寝汗をかきやすい
おすすめ食材の特性:
白きくらげ:陰を補う甘味・平性食材
百合根:肺陰を補う甘味食材
麦門冬:心肺の陰を補う甘味食材
石斛:胃陰を補う甘味食材
避けたい食材の特性:
生姜:温性で陰液を消耗する可能性
シナモン:大熱性で陰を損傷する可能性
陽虚体質(温め不足タイプ)の特性活用
体質の特徴:
手足が冷える、体温が低い
下痢しやすい、お腹が冷える
元気がない、動作が緩慢
温かいものを好む
おすすめ食材の特性:
生姜:温陽散寒の辛温食材
シナモン:補火助陽の大熱性食材
丁香:温中降逆の温性食材
肉桂:温腎助陽の熱性食材
避けたい食材の特性:
菊花:体を冷やす寒涼性食材
緑茶:体を冷やす涼性食材
季節別薬膳茶の特性活用
春の特性活用(3-5月)
春の体の特徴:
肝の働きが活発になる
気の巡りが重要
デトックスの季節
新陳代謝が活発化
春におすすめの食材特性:
陳皮:気の巡りを促す理気食材
薄荷:疏散風熱の涼性食材
桜の葉:気を巡らせる香気食材
たんぽぽ:清熱解毒のデトックス食材
夏の特性活用(6-8月)
夏の体の特徴:
心の働きが活発になる
体に熱がこもりやすい
汗で水分や気を消耗
食欲が落ちやすい
夏におすすめの食材特性:
菊花:清熱明目の寒涼性食材
ハイビスカス:清熱利湿の涼性食材
すいかの皮:清熱利尿の寒性食材
緑茶:清熱除煩の涼性食材
秋の特性活用(9-11月)
秋の体の特徴:
肺の働きが重要になる
乾燥の影響を受けやすい
陰液を補う必要がある
収斂の季節
秋におすすめの食材特性:
白きくらげ:滋陰潤肺の甘味食材
梨:清熱潤燥の甘味食材
百合根:養陰清熱の甘味食材
蓮根:清熱涼血の甘味食材
冬の特性活用(12-2月)
冬の体の特徴:
腎の働きをサポートする必要
体を温める必要がある
エネルギーを蓄える季節
陽気を補う必要
冬におすすめの食材特性:
生姜:温中散寒の辛温食材
シナモン:補火助陽の大熱食材
ナツメ:補中益気の甘温食材
クルミ:補腎固精の甘温食材
薬膳茶の特性を活かすコツ
食材の組み合わせの原則
相乗作用を狙う組み合わせ:
似た性質の食材を組み合わせる
例:生姜(温性)+シナモン(熱性)で温め作用を強化
例:菊花(涼性)+ハイビスカス(涼性)で清熱作用を強化
バランスを取る組み合わせ:
異なる性質の食材でバランスを取る
例:生姜(温性)+菊花(涼性)で作用を穏やかに
例:ナツメ(甘味)+陳皮(苦辛味)で味のバランスを取る
飲むタイミングと特性の関係
朝に適した特性:
気を補う食材:一日のエネルギーサポート
温める食材:体を目覚めさせる
理気食材:一日の気の巡りをスムーズに
夜に適した特性:
安神作用のある食材:リラックス効果
滋陰食材:夜間の回復をサポート
穏やかな性質の食材:刺激を避ける
薬膳茶の特性を理解する際の注意点
個人差への配慮
体質による反応の違い:
同じ食材でも体質により反応が異なる
最初は少量から始めて様子を見る
体調の変化を注意深く観察する
合わない場合はすぐに中止する
年齢や性別による違い:
子供:刺激の少ない穏やかな食材から
高齢者:消化に良い食材を中心に
女性:血の巡りをサポートする食材
男性:気のサポートを重視する食材
現代生活での活用法
ストレス社会での特性活用:
理気作用のある食材でストレス対策
安神作用のある食材でリラックス
清熱作用のある食材で頭をクリアに
補気作用のある食材で疲労対策
デジタル疲れへの特性活用:
明目作用のある食材で目のケア
清熱作用のある食材で熱を冷ます
滋陰作用のある食材で潤いを補う
理気作用のある食材で気の巡りを良く
まとめ:薬膳茶の特性を上手に活用しよう
薬膳茶の各食材には、中医学に基づいた独特の特性があるとされています。これらの特性を理解し、自分の体質や体調、季節に合わせて適切に組み合わせることで、より効果的に薬膳茶を活用することができるでしょう。
薬膳茶の特性活用のポイント:
自分の体質を理解する
季節の変化に合わせて調整する
食材の性質を知って組み合わせる
個人差があることを理解する
長期的な視点で継続する
安全に楽しむためのガイドライン:
少量から始めて様子を見る
体調の変化を注意深く観察する
専門書や専門家の意見を参考にする
現代の栄養学とのバランスも考慮する
楽しみながら無理なく続ける
薬膳茶は単なる飲み物ではなく、古代中国の知恵が詰まった健康習慣の一つです。それぞれの食材が持つ特性を理解し、上手に活用することで、毎日のティータイムがより豊かで意味のある時間になるでしょう。
最初は複雑に感じるかもしれませんが、基本的な特性を覚えて、実際に飲みながら自分の体の反応を観察していけば、自然と理解が深まっていきます。あなたにとって最適な薬膳茶の組み合わせを見つけてください。
※本記事でご紹介した内容は、中医学の伝統的な理論に基づく一般的な情報です。これらは治療を目的とするものではなく、個人の体感や健康状態に対する保証をするものではありません。体調に不安がある場合や治療中の疾患がある場合は、必ず医師にご相談ください。



